第51話


昼休み。


「えー、じゃあ暁海ちゃん今日来ないのー?」

「まあ、そうなるな」

「ちぇー」


 ふてくされる道尾。というより、昼食まで気付かなかったことに驚きだ。


「しょーがない、今日はメラノさんで我慢するとしよう!」

「え、わ、私……?」


 一緒に昼食を食べにやって来たメラノさんが道尾の標的にされる。


「うえっへへへ……」

「な、何……?」


 両手の指をワキワキとさせながらジリジリと距離を詰める。


「道尾様……」

「そっとしておこう燕翔寺」

「………そうでございますね」


 この状態の道尾に近づけば瞬く間に餌食にされる。まあ、男である僕は例外だが。


「また楽しそうな事してんな。桐堂」

「楽しいか楽しくないかと聞かれれば楽しいが、そんなんじゃないって言ってるだろ」


 僕の前の生徒の席にどっかり座る安良川を睨む。


「悪い悪い、ついな」


 そういいながら安良川は僕の肩を叩く。


「……ふんっ」


 そんな時、一人の男子生徒が苛立たしそうに鼻を鳴らす。


 大江山 竜。こいつも渡瀬と同じく僕たちのクラスメイトだ。


「………」


 そのままその場を立ち去る大江山。何だったんだろうか今のは。


「うへぇ、面倒な奴に目つけられたなー」

「面倒な奴?」


 性格が、ということだろうか。


「大江山って名前に聞き覚えないか?」

「………?いや、特に」


 「マジかー」と息をつく安良川。それほど有名なのだろうか?


「上に何人も兄姉がいるんだが、全員去年の学園祭まで一度も負けたことのない絶対王者として君臨してるんだよ」

「絶対王者、か」

「ああ」


「しかも勝つためには手段を選ばない、結構危ない戦い方をするって噂」


 実習で出くわしたら逃げた方がいい、と安良川は最後に付け加える。


「………」


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