第39話
「っ!?」
謎の人形は先程のように大きな口を出現させ、僕を目掛けて突撃する。しかし・・・
「させない……!」
突如現れた数体の人形たちがその行く手を阻む。
こっちは僕たちを追いかけようとしていた人形たちだ。
「ナイスフォロー、メラノ」
そして烏川がメラノさんの人形ごと大剣で薙ぎ払う。
「(決まった……!)」
しかし
肝心の相手は腹部に大きな切り傷が出来ただけで切断には至らずピンピンしており、逆にメラノさんの人形達は綺麗に真っ二つになっていた。
その傷も溶け始めていない。
「ちょ、ちょっと」
「何?」
「な、何でも……」
「そ」
明らかに何か言いたげだったが、どもるメラノさん。烏川は烏川でそのまま人形の方へ向かう。
「この剣で斬れないってことはコイツ、何かおかしいわよ」
烏川の黒い剣。一度お目にかかったものだが、その威力は絶大で、触れたものをドロドロに溶かしてしまう力を持つ。しかし、この人形は最初のナイフによる刺傷以外特に外傷はない。
「フォリンクリじゃ無いから、かな……?」
「つまり、何」
「エレミュートが全く無いんだと、思う」
「……成程ね」
何が成程なのかよく分からないが、とにかくあの人形には効果が無いらしい。
「ん?」
「何、桐堂。何かいいこと思いついたの?」
「いや、糸が・・・」
今まで焦っていたせいか気付かなかったが、何やらその例の人形には後ろかろ細い糸の様なものが伸びていることに気づく。
「糸?」
「ああ、糸だ」
「………?」
メラノさんは「えっ?」と、なんの事かさっぱりなようで、烏川も目をひそめるが分からない様子。
「ほら背中に……」
「何もないよ……?」
「だから……」
そこまで言って口をつぐむ。ここまで言って分からないのならそもそも見えていないのだろう。これ以上言っても無駄に場の雰囲気を悪くしてしまう。
そんな時。
「あるのね、糸が」
「え?」
意外な発言に唖然とする。
「貴方がそう言ったじゃない」
なにいってるの?といった目で見てくる烏川。人を馬鹿にしている目。しかし、今の僕にはその目が頼もしく感じる。
「あるんでしょ?確かに、そこに」
「……!ああ……!」
「どこに向かって伸びてる?」
「人形の後ろ、斜め下だ」
「角度」
「ぱっと見水平から30度くらいだと思う」
見えた通りの状況を烏川に伝える。何で出来た糸かは分からないが、その糸は確かにそこから伸びている。
「地下……違う、海中ってことね」
烏川は窓に向かってクラウチングスタートの様な体勢をとる。
「あ、暁海ちゃん……?」
「メラノ、そいつ自体は大したことないわ。桐堂のこと、頼んだわよ」
「っ……烏川っ!」
「……何」
「……頼んだ」
「ええ、任せなさい」
そう言って烏川はとてつもない勢いで窓から夜の世界へ飛び込むのだった。
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