第40話


 烏川が戦線を離脱し、メラノさんと2人で人形と対峙する。


「・・・メラノさん」

「な、何・・・?」


 正直なところ、この人形が大したことないようには全く見えない。が、烏川がこんな状況で判断を見誤るとも思えない。


 置き土産の様にいつの間にか頭部にナイフも突き刺さしている。


「僕も援護します。一緒に戦いましょう」

「・・・・うん・・」


 あまり気乗りしない様だが、やらなきゃ二人ともお陀仏。その辺は流石に分かってるのだろう。次々と可愛らしい兵隊の人形たちを出現させる。


「っ!」


 僕もライセンスデバイスを操作し、自身のハウンド、ロッカを呼び寄せる。


「krrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr」

「・・・・」


 金属音の様な甲高い音を響かせ、こちらの様子をうかがっている。


「(来る!)


 噛みつきに合わせてメラノさんの人形たちが飛び出し、再び拘束する。


 しかし、少しの抵抗だけで拘束は解かれてしまう。パワーが違う。


「(しかし・・・!)」


 ロッカを横なぎに切り払う。


「krr!?」


 ガァンッ、と鈍い音が室内に響き渡る。


 「(烏川の攻撃のときによく観察した。ある程度なら避ける方向を予測できる)」


 それに、少しは効いている。烏川のナイフが通用した様に単純な物理攻撃が有効なようだ。


「krrrr・・・・・」


 そして傷口から覗く金属の様な黒い光沢が目を引く。


 そして、徐々にその正体が現れていく。黒い装甲をもつ人型のロボットの様な外見だ。


 ぬいぐるみのガワを被っていただけの様だ。


殺戮担当機キリング・マタ・・・!?」


 驚愕の声を上げるメラノさん。


「知ってるのか?メラノさん」

「知ってるも何も、逃げよ?」


 完全に逃げ腰だ。最初から無理だと諦めている。


「(………そうだ)」


「そうですね。一旦逃げましょう」

「だよね・・。って、え・・・?」

「ほら逃げますよ!」

「わっ、えっ、ふぇっ!?」


 メラノさんの手を取り一目散に駆け出す。そう、これは


「(戦略的撤退だ)」

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