第28話
カチッ、カチカチッ
「…………」
傘草から受け取った今日の授業の録画データを部屋の備え付けパソコンでは無く、家から持ってきたタブレットに挿す。
あの理事長は兎も角、この学園内ではあまり安心出来ない。パソコンから逆探知なんかされたら溜まったものじゃ無い。
「(まあ、それは置いておいて……)」
早速閲覧する。シュミレーションルームでも少し見たけど、これならもっと細部まで確認できる。
「………やっぱり」
燕翔寺が最初に放った炎より、桐堂と合流してから放った2度目の炎の方が威力がある。燕翔寺は逆に手加減して放ったにも関わらず、だ。
少し飛ばして、今度は道尾の方に視点を向ける。
見た目では殆ど変わって無いが、設定を切り替え簡易ライセンスデバイスの表示を開くと一目瞭然。
道尾茜音 Level 12
このLevelっていうのがイマイチ分からないけれど、格段にこの数値が上昇している。
傘草に確認を取っても今日見た中で一番高かった数値は6だと言っていた。私の数値は、まあ1って事にしてもらってるけど。
これらシュミレーションルームで起きた異変。その時必ず、桐堂の右目の虹彩は金色に変化している。
「………」
一時停止し、桐堂の目を拡大してみる。それで何か分かるかもしれない。その時だった。
『横入りは感心しませんね』
「っ!?」
画面が暗転する。
強制停止された。そしてタブレットから音声が聞こえる。遠隔操作、いや違う。これは……!
『まだ彼の秘密をアナタ方に知られるわけにはいきません。深入りしないでもらいたいですね』
「チッ……!」
即座にタブレットに純性エレミュートを流し込み、電気信号に変換。干渉した相手の形跡から居場所を突き止める。
ちょうど窓から見える位置だ。
そのまま全てのエレミュートを放出、高濃度に圧縮し一本の黒い槍を形成する。
「逃がすか……!」
月明かりに照らされた一つの人影に向け、その槍を投擲する。
投げた槍はそのまま一直線に人影に向かって飛び、その身体を貫く。しかし、何事もなかったかの様にその人影はそこに佇む。
そして、嘲笑うかの様に飛び去っていってしまった。
「………あー、クソ」
今の槍投げですっかり白くなってしまった頭髪をかきあげ、ベッドに背中から倒れ込む。
大体の事情は察した。桐堂が狙われている理由。そして敵は少なくとも一つじゃ無い。様々な組織が彼を狙っているという事を。
「(想像以上に厄介ね……)」
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