第3話

 

 体育館から戻り、指示通り教室で待機していると1人の若い男性が入って来た。


「よぉし、そんじゃまず出席取るついでに軽く自己紹介だ。まずは俺からだな」


 若い筋肉質の男性教師はそう言って早速教室の黒板を起動し、大きな文字をペンで入力する。


「俺の名前は【傘草かさくさ 勿雲なぐも】。今日からお前らの担任だ。よろしく頼む」


 それだけ言うと名簿らしき物を取り出し、教室を見渡す。


「1番、安良川」

「あ、はい!」


 名を呼ばれた男子生徒は跳ね上がる様に起立する。


 「えっと【安良川あらかわ しん】です。趣味は〜…………」







 そうして前5人の自己紹介が終わると次に隣の席の人物が席を立つ。床につきそうなほど長い黒髪を持つ女子生徒、先程新入生代表で前に出た生徒だ。


 「名前は烏川暁海、好きなものはカフェオレ。以上よ」


 それだけ言うとすぐに着席する。


「(他に言う事はなかったのだろうか?)」


初対面だが、かなり素っ気ない印象だ。


「7番、燕翔寺」

「はい!」


 担任は特に気にした様子もなく次の番号と名前を呼ぶ。なら僕もそこまで真面目に自己紹介しなくていいか。


「【燕翔寺えんしょうじ 智恵ともえ】と申します。えっと、好きなものは抹茶アイスで御座います。皆さま、どうぞよろしくお願いいたします」


その少女は若干ヤケクソ気味に自己紹介をする。


その少女に僕は見覚えがある。


 【燕翔寺家えんしょうじけ】。世界有数のハウンド開発企業【飛燕ひえんグループ】の責任者であり、ここ、化狩学園都市内でもトップに君臨する有力者の一家。彼女はその令嬢だ。

 中学の頃、一度だけ同じクラスになっただけで殆ど接点は無い。


「(しかし、こんな学校に来るとは)」


「おい、桐堂。お前の番だぞ」

「っ!はい」


 ボサッとしているといつの間にか順番が回ってきた。慌てて席を立つ。


「(特に話したいこともないので無難に行こう)」


一度息を吸ってから口を開く。


「【桐堂とうどう 廻影みかげ】です。趣味は読書で、特にミステリーや推理小説が好きです。この1年間よろしくお願いします」






 一通り自己紹介が終わり担任の先生、傘草先生が名簿を閉じる。


「今日は特に授業とかは無いからな、後で配られる配布物を受け取ったら帰っていいからな〜」


 それだけ言うと傘草先生はその配布物を取りに教室を去って行った。


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