第27話 悲劇の夜

異変は 突然にその夜の遅くに始まった 悲劇の始まり・・


悲鳴の数々!剣を打ち鳴らす音! 火薬か魔法により 建物の石垣が大きく崩れる音


寝床から 飛び起きて 

金の髪飾りに手紙やエイルたちの小さな絵が入った大事な箱を持って部屋を駆け出す


エリンシア姫付きの女官たちは見当たらない


どうしようかと思い悩んだが 

まずは 黒の王妃アリアンの元に行ってみる事にした


白亜の美しい柱の廊下は所々、壊れて 

先日竜の老人が 持ってきた飾ってあったはずのあたりには


黒の家族の絵

その絵は炎に包まれ 焼けていた


もう一枚の白鳥の絵は 見当たらない

どうやら 何者かに 持ち去られたようだった 

エリンシアをモデルにしたと言った竜人の老人が描いた絵



「王妃様!」部屋に飛び込むと 

そこには 槍で貫かれて 絶命していた黒の王妃が倒れており

まだ幼児だった 黒の王子 アリシュア王子 

彼は首から上がない 首なしの死体・・哀れな骸となって

床に転がっていた


王たちの守護者 

竜人の守護者アレルドの無残な死体も転がっている

「あ・・ああ」



近くに 黒の王である竜の王が身体中血まみれとなり 

剣を杖代わりに 上半身だけ起こしていた


「王様!」


「白の国の裏切りだ・・

彼らが守る 黒の国に通じる道にある城の城門を開いて

巨人族の軍を通した・・」


「すまぬ 少し日時を読み間違えた

そなたと王女テインタル姫だけは助けたかったのだがな

そなたをリュース公の元に連れてゆき 王女もリュース公の元に・・


やはり残酷な運命から逃れなれない・・か」


ぐふ・・血を吐き出して そのまま 力尽きる


「王様! 黒の王様!アージェント様 お願い目を・・目を開けて・・!」

瞳を閉じて みるみる冷たくなってゆく


「ああ・・そんな」涙が零れる


ハッと気がつくと首に魔法の首輪をした竜人が傍に立ち

エリンシアには目もくれず

無表情に近くに来て 

抱きしめていたエリンシアから王の身体を奪い、そのまま王の首を斬り落とした


「!」驚きと恐怖でその場に座り込むエリンシア


赤い血の海 それに立ち込める煙 あちらこちらから聞こえる悲鳴


竜人は黒の王アージェントと幼い王子の首を

無造作に袋に入れる


ドア越しには放心して そのまま捕まった幼いテインタル王女


次に現れたのが

「おや!まだ獲物がまだいたぞ!」

敵の兵士・・同じ黒の国の者と 大柄な巨人族の戦士


その中の一人・・先程の竜人

無表情で立ちつくす竜の顔の異形の戦士 手には血まみれの剣

黒の王アージェントの首を刎ねた剣

 噂で聞いた おそらくあれが竜の戦士セルト・・


別の兵士が首の入った袋と幼い王女を連れ去った


「先程 王女は捕らえたが・・ここにも いい獲物が・・クク・・」



「城の国の人質のエリンシア姫か・・ヴァン伯爵は 獲物を生きていたなら 少しぐらい好きにしてよいと仰せになられた!」


「な・・なにを!」


捕らわれて 舌を噛まぬように 布で口元を縛られて 数人がかりで手足を抑え込まれて


「大人しくしろよ・・テインタル王女の無事を確かめたいだろう?」

服を半分破かれ 兵士に乱暴されて 気を失った


目が覚めた時には 牢屋の中だった 

他の牢屋の部屋にはエリンシアと同じく 捕らわれた黒の貴族の娘や妻達


ほとんどの者は奴隷として売られたり 

巨人族の奴隷として巨人族の国へ連れてゆかれ


エリンシアは 牢屋の中で 孕んでいた王の子供を流産した

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