クロスシンカー1224 (※lily)

春嵐

α

 クリスマス。街の景色も、ほんのすこしだけ、わくわくしているように見える。

 仕事だった。

 仕事。

 クリスマスも。関係がない。

 仕方のないことだった。自分の仕事は、街に必要なことだから。誰にも代わりが利かない。


『おいクロスシンカー』


「はい?」


 通信。


『大丈夫なのか?』


 心配されてしまった。世も末だ。いや年末だ。


「大丈夫ですよ。仕事は仕事なんで。やります」


『いや、そうじゃなくて。クリスマスなのにおまえ、恋人と別れるとか』


「なんすか。文句あるんですか。男のくせに」


『いや関係ないだろ』


 一瞬の無言。


『いや、あんのか。関係。女同士の間に割り込んだらころされるって言うしな』


「なんの話ですか」


『いやおまえが先に振ったんだろ』


「いいえ。振ったのは向こうです。私は振られた側」


『そっちじゃねえよ。話だよ話。話の方向』


「あ、ああ。話を振ったかどうかってことですね」


 仕事の準備ができた。


「あっ準備できたんでクロスシンク開始します。おやすみなさい」


『はいはい。防御は任せなさい』


 仕事。

 終わったら、クリスマス崩壊してないかなあ。なくなればいいのに。クリスマスなんて。

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