写真好き高校生の日常

オノ

第1話

それはある晴れた日の朝、窓から微かに差し込んだ光りを合図に今日も一日が始まった。

ベッドから起き上がりおぼつかない足取りで食卓に向かった。


いつもの朝食を終えて身支度を済ませる。

今日は休日なので皆寝てるようだ。

カバンの中にお気に入りのカメラを入れてそっと部屋の戸を閉めた。


今日はフォトコンテストに応募するための作品を撮りに街に出かけようと思っている。

自分の趣味にはあまり口出しされたく無いので家族には前日に買い物に行ってくると伝えておいた。


両親は音楽好きで演奏家になってほしいと期待を込めて僕の名を奏登(かなと)と名付けたらしい。

でも音楽より写真を撮る事が好きになってしまったのは意外だったらしい。

新しく高校生になって特に入りたい部活もないので今は趣味として写真を撮ることにしている。


色々と思いにふけりながらも出かける準備ができたので奏登は颯爽と家を飛び出した。


家の周りは平坦で道路と民家しか無いような場所なので撮影スポットと思われるような場所など一つもない。

バス停でいくらか待つとバスがやってきたので奏登は足早にバスへと乗り込み街へと向かった。


15分ほどすると風情のある古民家が立ち並ぶ趣のある景色へと変わった。

窓から景色を眺めるのは色んな発見があって楽しい。

暫くぶりに訪れる場所はどことなく新しい雰囲気がして新鮮な気持ちになれる。


奏登は目的地に着くとバスから降りてカバンからカメラを取り出した。

このカメラは休日にアルバイトをして貯めたお金で買ったカメラだ。


街を歩きながらとりとめもなく写真を撮っていく。

街並みや公園の紫陽花や木々、お寺や歴史的なものや海辺の風景など色々なものを写真に収めていく。

何かテーマがあるわけでもなく赴くままに写真を撮っていく。

でも何か物足りない気がしてきた。

奏登は写真を撮る手を止め、しばらく歩きながら自分の歩いている地面を見てただ赴くままに歩き続けた。

そうして黙々と歩きながら何も変哲もないただの住宅地にやってきてしまった。


撮るものがないので奏登は来た道を戻ろうとした。

すると前方に1匹の猫が道を横切っていくのが見えた。

奏登はその猫を写真に収めようと若干小走りで駆け寄った。

ある程度猫に近づいた。

奏登はカメラを構えて猫を撮ろうとした。

しかし、その瞬間猫がジャンプして家の塀を駆け上がり上手く写真に収めることができなかった。

奏登は塀を颯爽と伝っていく猫にカメラを向け直しなんとか写真に納めることができた。


猫は物陰に入り込み姿を消してしまったようだ。

奏登は早速撮った写真を確認した。

そこにはまだらな茶色をした猫が塀の上を颯爽と歩いている様子が映されていた。

猫の日常というものを写真に収められた気がした。


奏登は誰かの家に逃げ込んでしまった猫を見つけるために家の周りを探し歩いた。

するとどこからか女の人の声が聞こえてきた。

「ミャーちゃん最近見かけなかったけど今日は来てくれたんだねぇ」

どうやらさっきの猫はこの辺に住み着いている猫らしい。

奏登はとりあえずその場を後にしてきた道を戻っていった。


きた道を戻っている途中、奏登は色々と思いを巡らせていた。

「なんで自分が写真を撮るのが趣味なのか、ただ学校の部活とか休日が無くなるし運動は苦手、目立ちたがりでもないしただの引きこもりと思われたくないと思ったからとりあえず始めてみた。でも普通に家でゲームをするのも好きだけど。」

と自分に語りかけるように心の中で思うことがあった。


道の中盤まで戻ってくるともう時間はお昼頃になっていた。お昼ご飯の時間だ。

道の傍を見ると若干広めで人が疎なカフェ店らしいお店が見えた。

奏登は若干嬉しげに少し洒落たカフェ店に立ち寄った。

「いらっしゃいませ」

と店員の声が聞こえた。

奏登はレジのメニューを見た。美味しそうなパンケーキやデザート、クリームソーダなど食欲をそそられるものばかりだった。

奏登は心の中で思った。

「ちょっと値段は高めだけどたまにはカフェで食べてみるのが良いかも。毎日学校でお弁当ばかりのお昼だからたまには美味しいものが食べたいよな」

奏登はレジの店員にパンケーキとデザートと飲み物を注文した。

しばらくして商品が出来上がったので窓側の見晴らしの良い席に座った。

ついでにインスタ映えみたいなのを意識して注文した食べ物を撮った。

3分割法を意識してちょっと工夫して撮ってみたりもした。

何枚か撮り終わり早速注文した物を食べてみた。

やはり少し洒落たお店で食べるお昼は美味しい。

「いつも学校で食べる冷めたお昼よりもずっと美味しい」とひとり心の中で呟いた。

奏登はすぐに食べ終わった。


ゆったりと腰掛けてカメラを取り出し、今日取れた写真に目を通した。

どの写真が1番良いできかしばらく眺めてみた。

「どの写真もしっかり撮れているな。特に猫の写真は身近な風景に面白みが出てよさそうだな」

奏登は満足した表情で店を出た。


帰りのバス停に戻りしばらくバスを待つ。

「今日は天気が良かったし写真もよく撮れたから満足だな」

と色々心の中で感想を述べている間に帰りのバスがやってきた。

奏登は15分間バスに乗り自宅に戻ってきた。


家には誰もいなかった親は買い物にでも出かけているのだろう。

1人部屋に戻りコンテスト用の写真を選んだ。

「あの猫が写った写真にしよう。」

奏登は早速写真を送りコンテストに応募した。


数時間後に親が帰ってきた。

奏登は部屋で少しだけ学校の宿題をやって風呂に入り夕食を取って今日1日を終えてベットに就寝した。


それから1ヶ月が経った。

コンテストの結果発表の日がやってきた。

奏登はwebの結果発表欄を開いた。


結果はなんと特別賞だ。


評価点としてありふれた日常の景色の中に猫の存在が生き生きと写し出されていた点が評価されたらしい。

奏登は喜んだ。

地味な高校生だけど自分なりに自信がついた気がした。

奏登は部屋の中で仰向けになり天井を眺めながらガッツポーズを決めた。

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