第16話「耳はきっちりと揃えましょう」
簡易的なキッチンを作り上げてさっそくお料理を開始しました。
まず玉ねぎの皮を剥いてから薄切りにします。
「いいかロティ。肩の力を抜いてこう包丁の重みで切る」
マリネ先輩が見本を見せてくれます。
「おぉ、なるほどです。エイッ」
「ロティちゃんいい感じやで」
ジュレ先輩が監視役を務めます。
「はいっ。テイッ」
その隣ではポワレさんが目にも見えぬ速さで野菜を切り刻んいきます。なんといっても農業部の方は十人以上はいるみたいなのです。
玉ねぎを薄切りにしたあとはジャガイモの皮を剥きます。そしてまた薄切りにします。
ロティさんもマリネ先輩の見本を見様見真似で頑張ります。
「ロティちゃんゆっくりでええからね」
「へいっ」
包丁を使うときは集中力が必要ですが、一番は肩の力を抜くことが重要なのです。
一切れ一切れの厚さも不揃いです。ですが誰でも初めはそんなものです。
「あの、こんな不格好ですが大丈夫なのでしょうか……?」
心配になったロティさんは尋ねます。
「ああ、確かにフランス料理は三ミリなら全部三ミリと均一に切ることが大事だ。でも今日はポタージュだから最終ミキサに全部ブチ込むから気にするな」
「なるほど」
一通り玉ねぎを切り終えたロティさんたちは、農業部に分けて頂いたジャガイモを水で洗っています。
「なんで均一に切らんとアカンか分かるロティちゃん?」
「うーん……どうしてでしょうか。あ、さっき言った不格好だと示しがつかないからでしょうか? 確かに耳はきっちりと揃えろ、ともいいますしね」
「示し、耳は……なんかちょっとちゃうけどまぁええわ。確かに見栄えも大事やから間違ってはないな。でも一番は均等に火が入るようにする為なんやで」
「ほぉ、均等に火を」
「食材によって火の入り方がそれぞれ違うから火を通すタイミングも違うやろ。だからカレーなんかでも先に玉ねぎ入れて後に人参とジャガイモ入れたりする。せやけど分厚い玉ねぎと薄い玉ねぎがあったら先に薄い玉ねぎだけ焦げてまう。他にも煮崩れしやすいとか色々と理由はあるけどな、だからせめて一つの食材だけでも均一にしとけば失敗しにくいやろ? ってことやねん」
「なるほど……やはり料理は奥深いです」
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