第15話「稀代の策士」

「キョウハ、アリガトウゴザイマシタ。トテモタスカリマシタ」

 クリスティーヌさんは満足そうに言います。

「コレ、プレゼントデス」

「こんなに貰っていいの?」

「ハイ。カンシャカンシャデスネ」

「みんなぁお疲れ様ぁ〜」

 そこで軽トラックに乗ったアンチョビ先生がやって来ました。

「アンチョビ先生?」

 ジュレ先輩が不思議そうに首を傾げました。

「井森さんが今日は出張お料理レストランするから道具持って来いって」

「マリ、どういうこと? でなんでアンチョビ先生もマリの言う通りに」

「だって夜ご飯を先生の分まで作ってくれるっていうから……それにね……独り身だとね……分かるわよね遠野さん……」

「ああ……うちはまだ未成年なんでよく分かんないですどよく何となく分かりましたから」

「オリョウリ、クッキング、シテクレルンデス?」

「グフフ……ついに、ついにこの時が来た! ……いや待っていた!」

「なんか言い直した」

「クリスティーヌ。農業部のみんなも呼んで来てくれ。今日はみんなで晩ごはんを食べようではないか!」

「ハァイ! ヨンデキマァス!」

「野郎どもぉおお! 時は来た! それではみんなで楽しくぅレッツ、クッキング!」


 ・・・・・・・


 三人は作業服を脱いで体操服の上からエプロンを着ています。

 マリネ先輩はオレンジのエプロン。

 ジュレ先輩は黄緑のエプロン。

 ポワレさんは青のエプロン。

「そういえばまだロティはエプロン無かったな」

「はい……言われてみればまだ買っていませんでした」

 ガクリとうなだれるロティさん。

「チッチッチッ。落ち込むのはまだ早いぜロティ君」

「えっ……」

「そんな君の為に予備のエプロンを持ってきていたのだ。ちなみにうちの母上のエプロン」

 マリネ先輩は肌色のエプロンを差し出した。

「え、えぇえ!? いいんですか? というか大丈夫なんですか?」

「案ずるなよ、我が後輩。これはもう使っていないから少し拝借させた頂いた」

「あ、ありがとうございますマリネ先輩!」

「はぁ……マリあんた最初から全部仕組んでたやな」

「ジュレよ。我を誰と心得る? そう私こそは私立百合ヶ丘学園二年に所属するお料理部の部長にして稀代の策士。その名も――」

「二人とも軽トラックから机運ぼかぁ」

「はあい」ロティさん。

「こくり」ポワレさん。

「おぉおい! 言わせろよぉ! …………マリマリマリィ……」

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