第9話「お料理部」
「わたしやっぱりお料理部やめます」
『え』
全員が驚いてロティさんを見つめます。
「今回はたまたまみんなが無事だったけど、このまま部に居続けたらいつかみんなのことを傷つけてしまうかもしれません」
「花森さん……」
「ロティちゃん……」
「おいおいロティ。まだ部に入ってたったの数時間だよ?」
「よく考えたらわたしっていつからお料理部に入っていたんですか?」
「入ってたよ。だってロティって名前がもうある」
「ロティちゃん」
「え」
ポワレさんがロティさんの手をギュッと握りました。
「ポワレ……ちゃん」
「やめないで……」
ポワレさんの目尻には薄っすらと涙が滲みます。
「一緒に……お料理……頑張ろ」
「でもわたし……」
「お料理は……楽しいから……」
ポワレさんの頬に一筋の涙が伝います。
「ロティちゃんにも、知ってほしい」
「だけど……」
「ロティちゃんと、お友達になりたい」
「お友達……」
ロティさんにもまだ同級生のお友達はいませんでした。
嬉しさと自身の不甲斐なさがこみ上げてきてロティさんの目尻にも涙が溜まります。
「そうだぜロティ。匂いに誘われてこの調理室に来たのも何かの縁なんだしな」
「マリネ先輩」
「マリの言う通りや。呪いは少しずつ解いていったらええ。嗅覚はええねんから。もしかしたらロティちゃんの才能かもな」
「ジュレ先輩」
「花森さん。実は……先生もお料理苦手です。お恥ずかしい話ですが、お酒のアテは去年何度か井宮さんと遠野さんに作って頂きました」
「アンチョビ……先生」
「いやアンチョビ先生はもっと真剣に頑張らなお嫁に」
「遠野さん」
アンチョビ先生は普段は温厚で柔和な人なのですが、結婚、お嫁さん、独身などの連想ワードにはとても敏感肌なので絶対に禁止なのです。
「すいません、先生」
「いやまじで情けないだろ。生徒に酒のアテ作らせるって」
「井宮さん」
「すいません、先生」
「こ、こんなわたしでも……お料理部に入っていいんですか?」
四人は皆一同に顔を合わせ、笑顔でこう言いました。
『ようこそお料理部へ』
ロティさんは涙を拭いて笑顔いっぱいで答えました。
「はい……ふつつか者のわたしですが、よろしくお願いしますっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます