第6話「幻のお肉?」
「な、なんですってぇええ!?」
「呪い? どういう意味なんロティちゃん」
「はい。あれはまさに悲劇のはじまりでした……」
ロティさんはぽつぽつと昔話をします。
「昔、わたしは家族とフレンチレストランに行った際にお姉さんのようなシェフになりたいと思うようになりました」
三人はふむふむと真剣な眼差しをロティさんに向けます。
「なったはいいもののいざ料理をしてみると包丁はろくに使えず、あらゆる食材を燃やし尽くし、出来上がる料理はいつも黒い何かしらのモノでした……」
「何かしらのモノ……」
「そこでうちのお母さんはこう言いました。『誰でも最初は失敗するものですよ、アンちゃんだってきっと上手くなります』。ですが半年と一年、そして二年が経っても一向に成長しないわたしはいつからか呪いが掛けられていると思いこむようになり、食べる専門になっていたのです。まぁ食べるのが好きなので食べる料理が全部マズくなる呪いよりかはマシだとは思うのですが……」
「いやそんな呪いねぇよ!」
マリネ先輩はたまらずツッコミます。
「信じて下さいマリネ先輩! わたしはもう……ダメなんです。助からないんです」
「もう死ぬみたいな言い方」
「ほな、一回ロティちゃんなんか料理作ってみたら?」
「え?」
「ポワレちゃん。なんか食材余ってない?」
ジュレ先輩にそう言われたポワレさんは冷蔵庫を開けて、バットに入った牛フィレ肉を持ってきます。
「こ、これは……さっきの」
「牛フィレ」
「ダメです。危ない、こんな幻のお肉」
「いや幻のお肉て。とりあえず焼いてみたら」
「こんな高いお肉ダメですよ。もっとスーパーの割引された中でも更に誰も手に取らないようなお肉じゃないと」
「それどんなお肉!? 別に牛フィレなんかいつでも手に入るし安いねんから」
「へっ? 牛フィレ肉が……安い?」
「あぁ気にすんなロティ。こう見えてもジュレはお嬢様の中のお嬢様だから金銭感覚バグってんだよ」
「誰がバグってるって? 失礼やなマリ」
ジュレ先輩は頬を膨らましてプンスカしていると、ポワレさんがバットに入った鶏の胸肉を持ってきました。
「鶏肉」
「よしロティ。焼いてみよう。私たちは見てるから」
「えっ……」
「焼こう」
ポワレさんはロティさんの手を取りキッチンまで連れて行きます。
「ポワレちゃん。わたしほんとにダメで……」
「大丈夫。鶏はまだ安いから」
「えっ……」
「大丈夫。鶏はまだ安いから」
「そういう問題じゃ」
「はい」と言ってポワレさんは自分のエプロンとバンダナを外しロティさんに手渡します。
「かしてあげる」
「いいの?」
青い花柄のエプロンとバンダナを身に着けたロティさんは少し嬉しそうです。
「なんかわたし、料理できそうな気がしてきましたっ!」
「単純な子や!」
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