第17話 2人の約束
「優華」
「何?」
「パパの都合で引っ越す事になったの」
「…えっ…!?…嘘でしょう?」
「本当よ」
「そう…なんだ…」
「志伸君の事も気がかりかもしれないけど、あなたには来てもらわないと…いつ戻るかも分からないし…」
「…そうか…」
「だけど強制したくないから…どうしてもなら…」
「…大丈夫。一緒に行くよ」
「…そう?」
「うん」
突然の引っ越しの話。
そして─────
「皆さんに、まず悲しいお知らせがあります。深沢 優華さんが急遽、家庭の事情で転校する事となりました」
ザワザワ……
ガヤガヤ……
「皆に挨拶するのは辛いので、お別れを告げず挨拶なしに、そのまま、ここの学校を去るとの事です。クラス委員という仕事を最後まで、やり遂げる事なく中途半端なままで、ご迷惑をかける事となり学校を去る事になり、本当にごめんなさいとの事です」
ガタッ
俺は席を立ち教室を飛び出す。
「あっ!待って!久稜君っ!」
俺は先生に呼び止められた。
「あなたには彼女から預かっている手紙があるから」
「えっ…?」
「これよ」
「…ありがとうございます…」
俺は先生から封筒に入った手紙を受けとる。
「学校から出る事は駄目よ!外出は禁止!落ち着いたら戻って来る事!どうしてもの時は言って」
そう言うと教室に入って行く。
俺は手紙を手に屋上に行った。
【志伸へ】
【ごめんね…志伸。でも正直、私も突然の事で驚いてて…】
【志伸がアメリカから帰って来て昨日までの思い出は山程あるけど良い思い出だったよ】
【クラス委員、最後まで、やり遂げる事が出来なくてごめんね】
【いつ戻って来るかも分からないから。案外、一生戻って来ないかもしれない】
【でももし、戻って来た時は志伸とまた喧嘩して憎まれ口叩いて、それが出来たら良いなって思うよ】
【じゃあね!志伸】
【そして、ありがとう】
【深沢優華】
【P.S.私にとって志伸は心強い支えで違う意味で好きだったよ】
「……っ…て…」
「…………………」
「…華…優華…でだよ…何でだよ…」
俺は脳裏にフラッシュバックするように記憶が蘇った。
『ねえ志伸、来年の春も桜が見れたらいいね』
『……一年先の話じゃん』
『一年先と言っても、あっという間だよ』
「一緒に桜見るんじゃなかったのかよ……」
私がいなくなった直後、
志伸の記憶は全て戻った。
───運命のイタズラだね────
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