特進会議
一年六組の騒動が起きる前夜。
学院内に併設されている大図書館。その地下にある洋室には、数人の生徒たちが集い合わせている。
オイルランプの灯りがぼんやりと室内を照らす中、一人横長のソファーに足を組み紅茶を啜る千集院蓮は、目の前で立っている生徒たちに柔和な眼差しを向けていた。
「それで、現状はどうだい。上手くやってけそう?」
一人の女が一歩前に出て答える。
「はい、情報提供者Xから入手した情報によると
「へぇ……ほんとに繋がりあるんだ」
蓮は口端を緩め、目を細めながら父親譲りの髭一つない顎を触る。
「ちなみに人数は聞けた?」
「いえ、正確には」
「やっぱり五万じゃ少し物足りなかったのかな」
「ですがどの組にいるかの情報は」
「それを先に言いなさいよ」
「すいません。一年六組だと。現状ではそれ以上何も言えないとXが」
「なるほど六組か。ま、もちろん他のクラスにも紛れ込んでいるんだろうけど、その時はまたポイントを積めばいいさ。でこの中で六組は確か……」
一人の生徒が浅く手を挙げる。
「もう目星はついてる?」
「いえ」
「なるほど、ドラゴンは尻尾を隠すことが下手だと思っていたけど案外そうでもないのかな。他は、誰か怪しい生徒見つけた?」
先程の前に出ていた女が「怪しい人は幾らでもいます」と返す。それに皆が頷いた。
顎に手を添えた蓮は考えるような仕草を見せる。
「なるほどね……。まあ確かに、新入生はまだ必修試験も始まったばかりだし仕方ない、か。とりあえず今後の方針としては変更しない。何度も言っているが我々は守りに対し、潜り込んだ連中は攻めの構図だ。奴らの目的は我々特進クラスのみならず千集院ゼミの解体、排除。つまり皆殺しの退学処分だ。だが攻めてこそ最大の防御だと心得て欲しい。少しでも怪しいと感じたら容赦なく叩き潰してくれ」
それぞれが呟くように返事する。
「じゃ今日はもう帰っていいよ皆。――あ、そうだ四季子」
数人と共に部屋を退出しかけていた四季子と呼ばれた女は蓮の方を振り返る。
「今度の名人戦、準決勝の進出が決まったらしいから、このまま予定通り進める方向で」
「かしこまりました」
「どの道最後の相手は、ドラゴンだから――能力については任せるよ」
四季子は頭を下げ表情一つ変えることなく部屋を退出した。
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