第94話 鮑
僅か1分程の停車時間に
さっ、と乗車が済むのも
日本人ならではである。
(笑通勤電車とはだいぶ違うが。)
そうして、短い停車時間が終わり
サンライズエクスプレスに乗る人達は、狭い通路を譲り合って整然と乗車する。
さすがに、特急に乗るくらいの人達は
それなりに分別があるようだ。
と、思うと
鮑のクリーム煮や、焼売の包みをぶら下げて
よたよた歩くご老人、ひとり。
旅人らしくない軽装の、その人は
ロビーコーナーに向けて、草履でゆっくり歩いて来た。
「やあ」と
無造作に。
その人は、ふーてんの寅さんかと思ったが(笑)
出雲の神様だった(笑)。
あまりに威厳がないが(笑)そんなものである。
本物と言うのは、気配を隠すもので
どうしてそうか、と言うと
威厳なんて有っても、何の役にも立たないから(笑)。
もともと、統治者でもないので
自由が神様らしいのである。
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