第78話 journey

東海道線ホームは、既に夜遅く

通勤列車も、殆ど出払ってしまった時間。


九州行きの新幹線も終わってしまった時間に

サンライズエクスプレスはゆっくりと

品川方面から、しかし軽快にやってくる。


クリーム色と臙脂のボディは、国鉄時代を知る者には

どこか、懐かしい特急列車のイメージ。



その国鉄も、既にないが

夜行列車の叙情を残す列車、サンライズエクスプレスは

今、出雲市と高松行きとして残る。



電車、とはいえ

1編成にモーターカーが4両と言う

機関車で言えば2両分のパワーで

残る10両を率いる、充分な力量である。


揺れず、静かに停車する。




見事な止まりっぷりは、高級感にあふれる。



遠いヨーロッパから、オリエンタルエクスプレスで来た神様も

その高級感には脱帽もの、である。




ふつう、電車は

ブレーキのノイズや、モーターの唸りが

それらしいのだが


サンライズエクスプレスは、さすがに

寝台列車だけあって、揺れもせず唸る事もなく。



「さ、乗りましょうか」と、4者4様。


お好みの部屋に収まる。




フランスの女神は、シングル・DX。Aクラス一人個室に収まる。




ライティングデスクと、ドレッサーつき。



アメリカの神様は、シングル2階。

一人個室、屋根が近いロフトふう。



ドイツの神様は、ソロ。


機能的でビジネスライクなところ。




めぐの国の神様は、シングルツイン。

階段がなく、空間が広い。




木質の内装、静かな雰囲気は

高級感があり、これが庶民の列車かと思う

ようなゴージャスさ、である。



出雲市行きは前より7両に、それぞれ散らばるが



旅する、と言う楽しさに

しばし、気分転換、と言うところ。



旅は楽しい。



それが、日常を忘れさせるから?




新たな景色が、車窓を飛び去ってゆくし


定住、と言う生活様式が正しいか?と

自問自答したくなるような、旅の一瞬である。



もしも、定住がなければ

侵略も有り得ず、故に戦闘もない。



そんな連想も禁じ得ない。




元々、生き物は自由であるべきなのだ。

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