第70話 love kindness

ふたたび改札を通り、サンライズ・エクスプレスが来るまで

地下の銀の鈴で待つ事にした、神様たち。

歩きながら、もう閑散としてきた駅の風景を眺めながら


これが旅情と言うものだろうか、なんて

それぞれに思う、4者。



地下1階銀の鈴からは、そのまま高架の東海道本線ホームに

エレベータで上がれるので、そこだけは優等列車らしい雰囲気である。



今は、新幹線がメインとは言うものの、旅の主役はやはり

長距離夜行列車だろう、などと言うのは

人間の感傷であろうか。





「コーノスケ・マツシタはどうして会社に家族の幻想を持ち込んだのだろう?

ソケット・アダプタの特許も公開して儲けをフイにしたり」と、ドイツの神様。



「そうして、日本は一体になって。日本全体が発展しようとしていたんだね。

そういう時代だったんだ。よく、ソニーの商品アイデアを真似したといわれるけど

彼は、そういうアイデアを安くみんなに提供するのが、マツシタの使命だと

思っていたはずだよ」と、アメリカの神。




「そうね、それもひとつの愛かもしれないわ」と、フランスの女神。





それがどうしてこんなに、日本はなってしまったのだろうと

それぞれ、思っている。



やっぱり、本当の日本人とは違うものが

日本人の顔をしてなりすましているようにしか思えない。




そう思う、神様たちだった。





愛があれば、思いやりも生まれるし

それは、たとえひとりで生きていたって変わるものじゃない。



それを、思い出すのが「記憶」だったら。

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