偽る者たち

猿田

プロローグ

学校終わり、公園のベンチに座りながら思考に耽る。

めんどくさいし、でも稽古サボったら親父に怒られるんだよなぁ・・・そんなことを考えながらながら、途中で買った菓子パンを頬張る。


すると隣に一人の見知った顔の女が座る。

「どうしたの?こんなところでくつろいで、稽古遅れちゃうよ?まさか、サボろうとしてないよね?」

小さい頃からの馴染みである美鈴に図星を突かれ、思わず顔を背ける。

「うるせーよ、別にいいだろ。俺に構わず早く行けば?」

そういって正面を向き、菓子パンを頬張る。夕焼けに染まる公園をぼんやりと眺めながらゆっくりと時間は過ぎていく。

「・・・・いや、なんか言えよ。」

何も話さない空気感に耐え切れず思わず口に出す。美鈴はそれでも子供たちを見つめる。

「いや、懐かしいなって思って。私が泣いてるときに、貴方に声をかけてもらえて。そっから遊び始めたんだっけ?」

目を細めながら彼女は言う。目線の先には、男の子が転んでしまった女の子を慰めている姿が見える。

「ああ、そうだったな。あんときお前公園で一人で泣いてたんだっけ?そういやどうして泣いてたんだっけ?」

「・・・秘密。でも、ありがとね。あの時、貴方に声をかけてもらえてとても嬉しかった。」

にこやかにこちらを見て美鈴は笑う。

「おう・・・」

恥ずかしくなって思わず顔を背ける。正直なんて言ったか覚えてないけど、それを言ったら怒られそうだ。

「ねぇ、今日このままサボっちゃおうか。貴方が稽古に行きたいって言うんだったら別に言ってもいいけど。」

「まぁ、もともとサボる予定だったし。」

夕焼けは俺たちを照らし、俺たちを赤く染め上げた。静寂な時間が流れるも、そこにさっきのような気まずさはない。ゆっくりと流れる時間に心地よさを覚えながら、二人の時間を過ごしていた。


ずっとこんな日々が続くと思っていた。崩壊の音はすぐそこに迫っていた。

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偽る者たち 猿田 @allwould

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