秘密と自殺と片想い
松藤四十弐
プロローグ
死は、あってないようなものだった。それは他人事であり、いずれやってくるにしても身近にあるものではなく、例えるならば行ったことのない国の、行ったことのない町にある、決して利用することのない理髪店のようなものだった。だが、死が自分の人生になかったのは過去のことであり、今はもう堂々とそこに存在している。掴めはしないが、死は空気よりも重く、影よりも濃いことがはっきりと分かる。
つまり、ある秘密を聞いてほしいと思っている。何十年も生きてきて、私は十七歳の頃だけ、消化できていない。十七歳の秘密は、鉛になって魂に食い込んでいる。これさえ消化できれば、私は安心するだろう。
なけなしの叫びが聞こえたのか、白衣の彼女は椅子に座り、瞬きをしてくれた。彼女の視線が降り注ぐと、私は自然に口を開いた。
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