待つのも、待たせるのも
汀桜
第1話
私、
私と
そこから
堂々と胸を張って2人の関係をみんなに発表できる訳ではないけど、一緒に居られるだけ良かった。
_______そのはずなのに。
いつも通りの、「行ってきます。」を最後に、
ただ、ふらっと帰ってきて、焦っていた私を“バカだな”って、笑い飛ばしてくれたらいいだけ…
_______同じ空間に居てくれるだけでいい…
_______それ以上はもう、何も望まないから…
今日で何回目だろうか。
私が一方的にメッセージを送り続けていた。
消息を絶った彼だ。
勿論、既読は付かない。
“私のこと、嫌いになっちゃった?”
そう送ろうとして、
やめた。
「…こんなこと言われても困っちゃうよね……。」
“おはよう。今日もごはん、作っておきます。
いつでもリクエストしてきていいからね!!
いつでも待ってるよ”
彼がこのメッセージを読んでくれても、読んでくれなくても、
私が彼に世界で一番嫌われていても、そうじゃなくても、
彼が帰ってこなくなったあの日から、ずっと__________
(_________“既読”だけでも欲しいなあ…、なんて……。)
帰ってこなくなった理由もわからないし…、
今どうしているのかもわからない。
友達も、彼がいなくなって驚いていて。
一週間って、こんなに長かったっけ。
そう思えるほど、私の中で彼の存在は大きいものだと
失ってからやっと、思い知らされる。
空白の時間が怖い。
沈黙の時間が怖い。
空白や沈黙が、どさくさに紛れて
机に突っ伏し、何もかも忘れられたらと力を抜いてみる。
その時響いたのが、チャイムの音。
飛び上がった。
そりゃあ飛び上がる。私にすれば、
急がなきゃ。
逃げてしまう。
「おかえりっ、
玄関のドアを開けて、ハッとする。
(今の私には、逃げてしまう幸せすらないもんね………。)
「……あの…っ、…ごめんなさい、突然訪ねて……。それに、期待させちゃって…。メールか電話を入れた方が良かったわよね………?本当、ごめんなさい…。」
「いえっ!大丈夫ですよ!…訪ねてきてくださって嬉しいです、
訪ねてきたのは、
今では、私が唯一、
「…わざわざお茶まで淹れてくれてありがとう……!私のほうから勝手に訪ねたのに…。」
「いやいや、お客様にお茶なしはおかしいじゃない?…少なくとも私はそう思っているから…。だから気にしないでください!」
優しいのね、と穏やかに微笑む
(…体調が心配だな……。)
「…それで……、ヒロのこと…」
「……!」
「……
「そんなこと!
そうへらっと笑って誤魔化すと、
「………
無理しないで……顔が疲れてる。ちゃんと眠れてる……?ちゃんと食べてる……?」
「…っ、…大丈夫ですよ……?私、元気ですよ…?」
そう言ってみるけど、
「……今日は私がごはんを作ります!」
こんなハメに。
「そんなっ、申し訳ないです!お客様なのに……。」
「…弟の不始末や失敗は、姉である私がカバーするのですよ。…だから、今日くらいは私に任せてください。」
「…今日はありがとう……、ございます………。本当に。凄く助かりました………。」
「…ううん。…………突然…、…突然訪ねた私を……、受け入れてくれて、ありがとうね……。」
帰っていく
______なんだか、私だけが世界から切り離されたみたい……。
と。
待つのも、待たせるのも 汀桜 @arisu_sora
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