第13話魅力の天才は純粋だ

昼休み今日は亮太と2人でいつもベンチに座る。最近はいつもの4人で食べることが多かったから久しぶりだ。


「晴人どうすんだあの雰囲気はお前を諦めてないみたいだけど」

「そうは言ってもね僕が好きなのは春風だから」

「にしては顔が赤かったがな」

「そ、それは」

「なんでも良いけどな俺は、好きな人が変わることなんてよくあることだし、変なところにこだわることはないんじゃないの」

「こだわるってな、今は体育祭が忙しいからな」

「逃げることだけはすんなよ」


逃げるって何からだよ。僕は逃げるものも向き合うものも理解してない。だからこそ今は自分がやるべきことをする。体育祭だってあるんだ。


***


放課後滝沢先生に呼ばれた。その隣には星川さんがいたことが気になったがその理由はすぐにわかった。


「大宮は星川と知り合いらしいな」

「同じ中学でしたけど」

「そこでだなお前には校内を案内してほしい」


そうゆうことね、同じ中学の人は亮太と僕だけ。それに亮太はレギュラーに選ばれて、放課後は部活で忙しい。しかし待ってくれ僕もまだギプスしてるんだよ。関係ないか……


「わかりました。どの辺教えれば良いですか」

「そうだな……」

「できれば全部教えて欲しいなぁ」

「え!」

「大宮頼んだぞ、私は仕事の山があるのでな」


星川さん全部ってかなりかかるよ。ってそれが狙いなんだろうけどさ。内心怖かったのだ。僕の好きって気持ちが揺らいでしまいそうな気がして、約束のない僕の心が動いてしまいそうで、誠実さを大切にしていた僕にはそれが不誠実な気がしてたまらなかったのだ。


「どこから教えてくれるの」

「ここは1階だからこの辺を教えたら上に上がって最後に外の施設を回るよ」


僕は星川さんの会話術によってここ1ヶ月間の出来事を吐かされた。ただし、春風の件は伏せた。隠してることはきっとバレてるだろうけど、彼女は線引きを心得てる。人の事情にずけずけと土足で入ることはない。2階、3階、食堂、体育館、やら色々と回った。正直1回で覚えられるのかは疑問だけど、見ながら頷く彼女は何を考えてるかわからない。校内最後の場所音楽室を紹介したところで彼女は声を出した。


「ねぇ今日の昼休みご飯食べてたところ教えてよ」


教えたくはない。僕と亮太にとって何かを話せるベストプレイスだ。彼女の瞳の奥底には何が写っているのだろうか、心が見透かされている気がしてそれでも抵抗したかった。


「普通に食堂だよ」

「嘘」


ニヤリと笑う星川さんはビンゴとでも言うように何かを確信した。


「素直に言うと教えたくないんだよ。落ち着いて食べられる数少ない場所だから」

「そっか、なら良いよ。次はどこ行くの」

「校舎の中はあらかた教えたから外の施設かな」


階段を下り、1階に降りると3組の教室に1人の生徒がバックを背負っていた。


「大宮くん」

長谷川はせがわさん」

「大宮くんこの子知ってる人なの」


声に少しトゲがありませんか星川さん怖いです


「3組の学級委員長谷川未来みらいさん」

「もしかして星川さん?」

「私のこと知ってるの!」

「うん、クラスで話題になってたよもの凄い可愛い子が転入してきたってほんとに噂通りの可愛さでびっくりだよ!」

「そんなこと言われたら照れるよ~」


長谷川さんは本当にいい人だと思う。裏が全然あるように見えない。中村が彼氏なのがなんでってなるくらいだ。


「大宮くん案内頑張ってね、さよなら~」

「うん、さよなら」

「またねー未来ちゃん」

「夢ちゃんもまたねー」


って名前呼びはやくない?どんだけ打ち解けるのはやいのさすが魅了の天才。


「未来ちゃんいい人だね」

「僕もそう思うよ」

「む~」


なんで睨むのそっちが先に言ったんだよね。

外の施設も回り終わり、気づけば30分を超えていた。


「今日はありがとね大宮くん」

「これも仕事だかね」

「じゃあ……仕事じゃなきゃやってくれなかったの……」


軽口を言うとこうやってやり返されてしまう。 


「やれって言われればやるよ」

「嫌われてはいないんだね私」

「なんで嫌うの?」

「本気で思ってるわけじゃないよ、だけど私は大宮くんを落としたいから今の位置を知っておきたかったから」


星川さんでもここまで慎重になるんだ……好意を持たれることは嬉しいだけどやっぱり僕は春風が好きだ!


「朝も言ったけど私は諦めてないから……」

「そっか」

「私を特別扱いしない大宮くんのことが大好きだから」


顔を赤くして、柄にもないことを言う星川さんはやっぱり可愛くて油断したものなら鼓動が早くなる。反応を見た星川さんが1歩近づいて僕の頬にキスをする


「ドキドキしたでしょ」

「そ、そんなこと」

「私はドキドキしたよ」


頬を真っ赤に染め上げて、ウィンクをする彼女に僕はまんまとやられて、今まで以上に心臓が音をたてて顔を赤面させる。

僕の精神もつかな……さっきまで春風が好きだとか思ってたのにこんなにも動揺させてしまった。頬に残る感触は熱を冷まさせてはくれない

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