第2話日常と委員会決め
家に帰っても胸のざわざわが拭えることはなく。脳内でずっと、愛衣の言葉がループする。約束の言葉ずっと覚えていたことなのに、覚えていてほしかったことなのにあの時は忘れていてほしかったと思ってしまった。
「最低だな僕は」
動き出した時計の針は想像以上の速さで回って10年間の初恋すらも終わらせていく。もう動いた針は戻らないよ……だってあの笑顔にときめかなかったんだ。自意識過剰ですんだならどれだけ良かったか。ベッドで横になっていると机においてあったスマホがピコンと通知を知らせる。
「LONE?誰だろ」
LONEは子供から大人まで利用する連絡用アプリのことで全世界で普及しているものだ。
アプリを起動させて名前を確認すると愛衣と表示された。ドキッとしながらもトーク画面を表示するとどうやら母さんが教えたみたいだ。
「なんで俺の母さんと繋がってるの?」
思わず声に出してしまった。返信しないとな
愛衣(勝手に追加してごめんね。晴人のお母さんから教えてもらったんだ。よろしくね)
晴人(大丈夫、よろしく)
愛衣(もし、良かったら明日一緒に学校行かない?)
晴人(わかった、じゃあ7:55に別れた場所で)
愛衣(了解!)
愛衣のことを思うと断れなかった。きっと愛衣もちょっと前の僕と同じであの約束にとらわれているんだ。愛衣は美人だから僕なんかとの約束は忘れた方が良いからもっといい男がいるはずだから
僕と少し一緒にいれば好きじゃなくなるはず
***
7:50駅のホームにつくと笑顔で手を振る愛衣の姿が見えた。
「ごめん待った」
「今来たところだよ」
「行こっか」
「うん」
学校に着くまでの間話したことはたわいのない話ばかりだ。昨日の番組や今日の授業、どんなゲームをやっているか、僕は10年前の話を避けるように話題を出した。愛衣は笑って話を聞いてくれる
でも、愛衣は決心した顔をしたかと思うと
「昨日話した約束のこと覚えてた」
小さい声だった。それでも勇気を出して言ったのは僕にでもわかる。だからこそ嘘をつくことはできなかった。そんなことを初恋相手にできなかったんだ。
「覚えてたよずっと」
「そっか、嬉しいな」
「僕も忘れられてるものだと思ってたから」
「そんなわけないよ。あの頃のことは多分一生忘れない」
力強い表情に僕はそれ以上言えなかった。学校に着くと授業準備だけすまして自席に座る。
「なぁ晴人今日の委員会決め何かやる」
僕の後ろの席に座る。
「う~ん今んとこは決めてないかな」
「学級委員やれよ」
「でも中学でやってたし」
「へぇ~晴人くん学級委員やってたんだ意外」
青山さんが話に入ってくる。
「そうなんだよ。でもこいつはさ根が真面目だから不器用なりに上手くやってくれるのよ」
「晴人くんやろうよ、私もやるつもりだし」
青山さんやるの!それならやりたいかな
「じゃあやろうかな」
4時間目委員会決めの時間になった。滝沢先生が教卓の前で指示をだす。
「この学校の委員会は全部で5つ学級委員、風紀委員、環境美化委員、保健給食委員、図書委員まずは学級委員から決めるぞやりたい者は挙手してくれ」
青山さんが振り返りこちらの様子を見る。その姿に僕がやるからやってくれるのかなと勝手な受け取り方をしてまう。可愛いな青山さんは。僕が右手をゆっくりと上げると青山さんも手を上げる。
「晴人がやるならやりたい!」
愛衣のまさかの挙手に僕は動揺してしまった。嫌なわけではないんだよ気まずいだけで……友達としてこれからも仲良くしたいしね。だけどできれば青山さんとの接点をつくりたい、
「とりあいず男の方は大宮で良いな。女の方はどうやって決めるか……じゃあ大宮に決めてもらうか」
意地悪な笑みを浮かべる先生の言葉に反応して亮太まで、どっちにするんだよぉ~と煽りを入れてくる。
「勘弁してくださいよ、投票で良いじゃないですか」
「悪い、悪い、そうだな2人は一言ずつ言ってから投票で決めよう」
結果を言えば15対14で青山さんに決定したわけだけど僕のは無効票にした。だって青山さんに投票するのはよこしまな気持ちだし、愛衣に投票するは気まずい……このあと先生にバインダーで軽く頭を叩かれたのは内緒の話だけど
「学級委員になったのでこれから進行を務めたいと思います。風紀委員やりたい人……………………」
別段揉めることなく決まってくれて僕は一安心だ
表に立つのは苦手だけど青山さんと一緒なら悪くないと思えてしまうのだから恋は怖い。
チクリと刺さる罪悪感を感じながら今日も一緒に帰る。2週間が過ぎると罪悪感は感じなくなっていた……けれど学生とは色恋沙汰の噂が好きなもので僕と愛衣の付き合ってる疑惑が流れだした。
満更ではない愛衣と青山さんのことが好きな僕
関係は崩れるように変化する
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