第187話 緊張し過ぎて

後日、薫は兄、透に小山内を会わせるべく薫の家に小山内を呼んだ。そして小山内と透が初対面となる。

緊張した面持ちで小山内は薫の家の玄関を開ける。


「こんばんわ~…」


「清入って!」


すぐに薫が出迎えた。流石の小山内も少し上がっている。


「兄ちゃん、私の婚約者の小山内清だよ」


透は下から上まで小山内を見て


「まあ、座れや…」


そう言った。


「はい…失礼つまつ…」


小山内は緊張のせいかろれつが回っていない。


「清…そんなに緊張しなくていいよ…」


薫が心配そうに小山内を見つめる。


「ところでお前…薫と将来を見据えての付き合いって聞いてるが、それで本当に良いのか?」


「あの…はい…かおりちゃんと結婚してください…」


「いや、薫と結婚したいのはお前だろ?俺じゃねーよ…」


「え?はい?あっ…はい…あの…俺は…お兄ちゃんが大好きだす…でから…かおりさんに今日許可をもらおうと思って…その…」


透はこの全然会話にならない男を見て薫の方を向き


「薫…こいつ何言ってるか全然わかんねーぞ…大丈夫か?」


「あぁ、大丈夫大丈夫…ちょっと兄ちゃんの前で緊張してるだけ…バカだけどそこまでじゃ…」


小山内は今の薫の発言に目が飛び出しそうになっている。


「か…かおりちゃん…バカだけどそこまでって…そういう目で俺を?」


「そりゃお前…そんだけバカだったら誰でもそう思うだろ!」


「え?お兄さん…まで…そんな…」


「とにかく!清は私と将来を共にするって話しはしてるから!」


「はい…そうです!かおりちゃんと…けっ…こっ…こっ…けっ…こっ…こん…」


「あ?コケコッコン?何言ってんだお前…」


ちがーう…ダメだ…緊張して上手く喋れん…落ち着け~落ち着け~…


「兄ちゃん、もし清が学校卒業出来ても出来なくても兄ちゃんの会社に入れてもらえる?


「あぁ、それは構わないぞ。だって…こいつじゃどこか就職ったってなかなか難しいだろ?」


「お兄さん…アディダス…」


ヤベっ…噛んじまった…


「何だよアディダスって…」


「あぁ、兄ちゃん…それはありがとうございますって意味だよ…」


薫は慌ててフォローする。


「すみません…ちょっと噛んじゃって…」


「まあ、いいや…薫が選んだ道だ…ちょっと頼りないけど薫が愛の戦士って言うからおまけで合格ってことにしといてやるよ…」


「ありがとうごぜえます!」


「何時代だよ…」


「何はともあれ良かったね清…」


「うん…もう就職の心配も要らないし、かおりちゃんとの将来も認めてもらえたし…もう安心だね…」


「清、ひとつだけ約束しろ!もし薫を泣かせるような事をしたらお前は地獄に堕ちるぞ!」


「は…はい…絶対にかおりんを泣かせません!例え泣かしても笑わせます!」


清…もう喋らなくてもいいよ…喋れば喋るほどバカだと思われちゃうから…

薫はこれ以上兄透に小山内がバカだという印象を植え付けさせたくなかった…

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