第186話 就活
秋の気配も深まる10月、朝晩は肌寒く日中の寒暖差が大きくなるこの季節、天斗、理佳子、薫は就活で忙しくなり始めた。小山内だけは薫の努力の甲斐もなく、卒業すら出来るのかと危ぶまれてる。
授業が終わって天斗達は学校を出て帰る途中
「黒ちゃんはどこか良いところ決まりそうなのか?」
小山内が言った。
「そんなのわかんねぇよ…まだ就活始まったばかりだしな…」
「そっかぁ…どんな仕事に就きたいんだ?」
「俺は普通の会社員がいいよ」
「いいなぁ~、俺はまず卒業しないとなぁ…かおりんは何やりたいの?」
「うーん、私はアパレル関係の仕事したい…だからそっち方面で探してる」
「暴れる?かおりんまだ暴れたりないの?暴力団関係とか?」
新入生の相澤信二郎が
「小山内先輩、アパレルっす!アパレル関係ってのは洋服とかの販売員とかのことッス!」
「お…おう…ヨシ!今のツッコミの速さポイント高いぞ!」
「ウッス!」
後輩もなかなかバカの相手は疲れるだろうな…と薫と天斗は心の中で呟く。
その日の夜、珍しく理佳子から天斗に電話があった。
「もしもし…たかと君?」
「おう、珍しいな、理佳子から電話くれるなんて」
「待ってたらなかなか掛かって来ないし…」
「悪い悪い、理佳子は就活どうしてる?」
「うーん今のところ事務員の仕事探してるよ。それでね、実は卒業したらたかと君の家の側に引っ越そうかなって…だからそっちの方で就活してるんだけど…」
「理佳子…お前…それいいな!」
「うん…ずっとたかと君の側に居たいから…」
「嬉しいな!じゃ、今度家遊びに来いよ!泊まりで」
「うん…また行く…たかと君の方は?」
「俺はまだまだ決めかねてるけど、会社員の方がいいかな…」
「そうなんだ、たかと君なら大丈夫だよ!好青年って感じだし」
「そうか?」
「たかと君、タカもたかと君に会いたがってるよ…」
ミャアオ…タカがそうだぞ!と自己主張する。
「ね?」
「あぁ、タカは可愛いな!」
「そうでしょ?たかと君が居なかったらきっとタカは…」
「理佳子…お前とタカと三人で一緒に暮らしたいな…」
「うん…いつかそういう日が来るといいなぁ…」
電話を切ったあと、理佳子はタカを抱き上げて
タカ…たかと君と一緒に暮らせたらお前も嬉しいでしょ?
ミャアオ…タカは理佳子の言葉にテンションが上がったのか、理佳子の顔に自分の顔を擦り寄せる。
一方薫は小山内家で夕飯を一緒に食べていた。
「お母さん、卒業したら私ここに居座ってもいいですか?」
「かおりん、卒業まで待つことないじゃん!かおりんがその気なら別に今から家で生活したって私は構わないよ!」
「でも、やっぱり兄が高校に行かせてくれてるから…やっぱりちょっと…」
「ま、そうだね…親代わりのお兄ちゃんに対してちょっとそれは難しいか…」
「うん…」
「ところで清はちゃんと卒業出来るんだろうねぇ~…」
吟子の冷ややかな視線に小山内が思わず咳き込んでしまう。
ゴホッゴホッ…
「母ちゃん…多分大丈夫だよ…かおりんが何とかしてくれるから…」
「バカ!そういうことは自分で何とかしなさい!」
「お母さん、いざとなったら清は兄に頼みます!兄は運送業の仕事に就いてるから、車の免許さえ取れれば就職にはありつけるはず!」
「そりゃいいねぇ!トラックなら清でも何とかやっていけるだろうから!」
「はい!」
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