第183話 またもや危機一発
理佳子は必死に飯田から抜け出そうともがく…しかし飯田は力で理佳子の肩を抑え逃がさない。
「清水、お前だって俺にノコノコついて来たんだからその気があるんだろ?純情ぶるなよ!」
理佳子の抵抗むなしく飯田が理佳子の唇に自分の唇を重ねようとしたその瞬間…
バシッ!
飯田の頭に何かが直撃する。
「痛ってえなぁ…」
飯田が頭を押さえて何かが飛んできた方を睨む。そこには先ほどの不審な男が立っていた。
「誰なんだよてめぇは?」
「下衆野郎!」
「あ?」
「その娘嫌がってんだろが!」
「てめぇには関係ねーだろ!こいつは俺に付いて来たんだから嫌がってねーよ!心配すんな!」
「理佳子ちゃん、教えてくれ!迷惑なんだろ?」
理佳子は恐怖で何も言えず震えている。
「ほら見ろ!こんなに震えてるじゃねーかよ!」
「うるせぇんだよ!お前は他所者だろ!引っ込んでろよ!」
「そうは行かねぇよ、あの石井って坊やに頼まれたんだからよ!」
石井?石井君?何であの子が…また私を助けに来てくれたの?
「フッ…あぁシラケた…好きにしろ…清水、お前だってまんざらでもなかったくせに…その気にさせといて純情ぶってんじゃねーよ!」
そう言って飯田が不審な男の横を通り過ぎようとした時
ドフッ
飯田の腹を思いっきり蹴り飛ばした。
「う…グフッ」
飯田が腹を押さえて突っ伏した。
「男の風上にも置けねぇ野郎だな…理佳子ちゃん、大丈夫か?」
理佳子はこの得たいの知れない男に自分の名前を呼ばれて動揺している。その時
「理佳子先輩!大丈夫っすか?」
聞きなれた声に理佳子は安堵した。
「石井…君…」
理佳子は恐怖で震えながらそう言った。
「理佳子先輩、安心してください!この人は…僕の友達です!」
「え?」
黒崎の仲間が石井を二度見してそう言った。
「え?」
石井もその反応を見て二度見する。
「友達?」
「え?違う?仲間?」
「え?」
「え?」
お互いこの微妙な距離感をどう例えたらいいのか迷っていた。理佳子はこの二人の微妙な空気にオロオロしていた。
「あの、何だかわかりませんが…ありがとうございました。何とお礼を言ったらいいか…」
理佳子が顔を伏せてモゴモゴ言っていると
「あのさ、俺…青木…このチンチクリンの知り合いで…君の…ファン…的な?」
チンチクリン…はぁ?誰がチンチクリンなんでしょうか?えぇ?俺の何処がチンチクリンなんでしょうか?はぁ?何この人!何この人失礼な!
「石井君の…知り合い…」
理佳子は少しずつ気持ちが落ち着いてきた。とりあえず自分の味方とみて間違いないであろう男達と判断して気が緩んだ。
「また石井君に助けられちゃったね…この間はごめんなさい…でも…私彼氏居るからね…」
「理佳子ちゃん…実物は段違いに可愛いね…出来たら…握手してもらえますか?」
どういうことだろう…実物はって…
「あ…あの…青木さんはきっと夢の中で理佳子先輩の顔を想像したんじゃないですかね…きっとそうですよ…ハハハ…」
あっぶねぇ…内緒で写真撮ってたことバレるところだった…やめてよ青木さん…
「あ…俺、このチンチクリンから理佳子ちゃんの写真もらって…それで一目見ようと…」
「あ~あ~あ~!違うんです違うんです!この人は嘘ついてます!写真なんか僕持ってませんから!あるわけ無いじゃないですかぁ…」
「いや…あんなに沢山…」
「理佳子先輩!助けたお礼に握手お願いします!」
「お前がかよ…」
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