第178話 黒崎家の家族構成

この回を持ちまして、少しの間休載させて頂きます。読んで下さる読者様には申し訳ありませんが、ご了承下さい。


小説本文

後日、薫は吟子の元へ報告に向かう。


「お母さんただいま~!」


そう言って元気に挨拶して小山内家のドアを開けた。


「お帰り~!どうだった?」


「うん、いっぱいお話した。全てを聞いてモヤモヤしたものが全部消えたらスッキリしちゃって、それだけでもう満足しちゃった!」


薫が完全に吹っ切れた表情で話すのを見て吟子も安心した。またかおりんが戻ってきてくれた。


「そうかぁ~、そりゃ良かったねぇ!」


「お母さん、小山内家のことを話した。そしてここに嫁ぎたいって…そしたら応援するって!今度お母さんにお会いしたいって!」


「あらそう!そりゃ嬉しいねぇ!」


「清は?」


「まだ寝てるよ…ほんと寝坊助だから…」


「お母さん、大好き!」


この子は、本当のお母さんに会ってからも全く変わらず私に懐いてくれて…てっきりこっちには寄り付かなくなるのかと思っていたのに…


「かおり!小山内家の嫁になる以上はちゃんと覚悟してよ!」


「え?何?」


「小山内家は愛を大切にする!誰に対しても!どんなことがあっても、絶対に家族を大切にする!」


「うん!わかった!家族を大切にする!」


吟子は薫を抱き締めて頭を撫でる。

そう…この温もり…この匂い…この優しさ…この全てを感じていなかったら、きっとお母さんと会った時、もっと違和感を感じていたかも知れない…素直に飛び込めなかったかも…吟子さん…ありがとう…お陰でいっぱい二人の時間を満喫出来たよ。



天斗の母、美知子は、天斗から薫とその母の話を聞いて動揺していた。薫の母が薫と接触したということは、自分の過去を知らせる可能性が十分にあったからだ。そうなると天斗にも大きな影響が及ぶ。それを恐れていた。矢崎拳との関係はたった一度きりだった。矢崎拳は女性を魅了する力を持っていた。優しく、頼りがいがあって、落ち着いた空気感、どっしりと構えた姿に女達は惹かれる。有名だった矢崎拳のことを美知子は知ってはいたが、偶然夜の街で出会った時、まさか一夜限りの過ちをおかすとは、その時思いもよらなかった。美知子は酔って矢崎拳の肩にもたれ、そのまま男の優しさに堕ちていく…そして二人は夜の闇へと吸い込まれていった。

そして天斗の妊娠がわかったとき、矢崎拳にも二人目の子供が授かっていたことを知る。美知子は自分から身を引いて一人悩んでいた。そして職場の上司であった黒崎正男に声をかけられ、相談に乗ってもらうことになった。黒崎もまた、当時三才になろうという美香を男手一人で育てていて、美知子にお互いのメリットを考えて、天斗を認知すると言って結婚の話が進展していった。それが今の黒崎家の家族構成となる。それ故、天斗は黒崎正男の息子として微塵の疑いも持っていない。

天斗が幼い頃に理佳子と一緒に薫を連れてきた時、美知子は複雑な想いだった。天斗と同じ父を持つ薫…例え知らなかった事とは言え、その母真紀に対しても懺悔の気持ちで胸を締め付けられる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る