第172話 吟子の直感
「どうして…今まで教えてくれなかったの?」
「何度も言おうと思ったさ…何度も…でも…お前が一度も母さんのことを聞こうとしなかったから、お前の気持ち尊重したくて、聞いてくるまで待ってたんだ…」
「たしかに…物心付いたときから居なかったから、何か事情があるんだとは思ってたし…兄ちゃんいつも私を淋しくないようにって一緒に居てくれたから…お母さんのことを聞いちゃ悪いなって思ってきて…」
二人の間に重い空気が流れる‼️
「薫…今度…会ってみるか?」
突然そんな事言われたって…どうして私達を置いて行ったのかもわからないし、会ったとしてもお母さんって実感も湧かないかもしれないし…
「……………」
「ま、お前が会いたいと思ったら言ってくれ…そのときは必ず母さんに会わせてやる!」
お母さん…会えるの?…どうしよう…どんな人なんだろう…会いたいけど…酷いこと言っちゃいそうで…でも……………お母さん…
透は自分の部屋で着替えて風呂に入る準備をしていた。
「兄ちゃん!」
「おう…」
「お母さんって…どんな人?」
「………母さんは、凄く優しいぞ。お前のことを心から心配してる。そして、いつか謝りたいって言ってる。母さんな…無理が祟って少し身体壊してるんだ…だから…時々病院に入退院繰り返しながら働いてる」
「そう…なんだ…」
「会うか?近い内に」
「………うん、会わせて…」
「そうか、わかった!じゃあ夏休み中にでも会えるように段取りしてやる!」
「うん…」
吟子さんに相談してみよ…お母さんのことを…
翌日の朝
「お母さん!ただいまぁ~」
薫は精一杯明るく振る舞って玄関を開けた。
「おはよう、かおりん!」
しかし吟子の目には薫の中の変化を見逃さなかった。吟子は薫のことをよく見ている。
「かおりん、今日は二人でランチしようか?」
「うん!お母さんと二人でデート!」
薫は無邪気に笑ったつもりだったが、その表情にはどこかぎこちなさがあった。それは、薫をよく観察しなければわからないほど小さな変化だったのだが…
「かおりん…」
吟子は薫の側へ寄って抱き締めた。
「お母さん?」
吟子は抱き締めながら薫の頭を優しく撫でる。吟子には直感で薫が自分から離れていくのではと感じたからだ。
「薫…あんたは私の娘だからね…」
「お母さん………」
何で…何でそんな事言うの?私は…吟子さんの娘だよ?なのに…どうして?
この時、吟子も薫も何故か目頭が熱くなっていた。
「かおりん…何かあるんだろ?私に話したいことが…」
「お母さん…」
どうして…どうして何でもお見通しなの?どうしてこの人はいつも私のことを何でも知ってるの?どうしてわかるの?不思議…
「お母さん…相談があるの…」
そう言って神妙な面持ちで語りかけた。
「実は…」
「かおりんおはよう!母ちゃんお腹すいた~」
その時小山内が二階から降りてきてこの話はランチに持ち越されることになった。
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