第173話 透の決意

「それじゃちょっとかおりんと出掛けて来るから」


吟子が小山内に声をかける。


「そうなの?」


「お昼ご飯はテーブルにあるから食べて」


「はぁい」


「かおりん、行くよ」


「はい!」


そう言って吟子と薫は近くのファミレスでランチすることになった。


オーダーを済ませて


「で?相談ってなに?」


「お母さん…実は昨日、兄からお母さんに会いたいか?って聞かれて…どうしたらいいか迷ってるの…」


「かおりん、あんたの気持ちわかるよ。突然会えるって言われてもそりゃ戸惑うよね。でも、会えるってことはあんたのお母さんは会いたいって思ってるってことでしょ?だったらすぐにでも会った方がいいよ!」


薫は自分を実の娘のように思ってくれてる吟子の心情も考えていた。


「かおりん、あんたは優しい娘だから私のことも心配してくれてるでしょう?大丈夫!例えかおりんの気持ちに何かしらの変化があったとしても私はあんたのお母さんだし、あんたは私の娘さ!」


「お母さん…ありがとう…もし会えたとしても…何話していいかわからないんだけど…」


「そうだねぇ、まず自分の想いを素直に伝えなよ。そしていっぱい甘えておいで!自分がどう思って生きてきて、今どうなったのか、ありのまま話せばいいよ!ただ、恨み言は言ってやるんじゃないよ?きっとたくさん罪の重さを感じて生きてきたんだろうから…それで許してあげな!」


「うん、わかった…そうしてみます…」


その時オーダーしたものが目の前に運ばれて来た。


「さ、食べよう」


「はい!」


二人は食べながら


「お母さんって…全部私のことをお見通し!」


「そりゃそうよ!私の大事な娘だもん!全てわかってやるのが親ってもんさ」


全てわかって…それが親…私の親は…本当に全てをわかってくれるだろうか…


その日の夜、薫は自分の家に帰り兄、透の帰宅を待った。夜9時過ぎて玄関のドアが開く。


「兄ちゃんお帰り!」


「薫…」


「兄ちゃん、今日カレーライス作ってみたんだけど…食べれる?」


「あ?お前が作ったのか?」


「そうだよ、お母さんに教えてもらった!」


「………」


透は晩御飯の弁当を買ってきたが、薫が自分の為に作ってくれた晩御飯に感極まって思わず涙が出そうになり


「薫…ありがとな。早速食べたいな!」


「わかった!すぐ温めるから先にお風呂行ってきて!」


「おう」


お母さんか…薫も随分小山内ってやつの母親に懐いてんだな…本当に良いんだろうか…今の薫に母さんを会わせて…薫が二人の母の狭間で混乱しなければいいんだが…

透は薫の気持ちを考えて、判断に迷う。しかし薫自身が選択したのだからと、透は母に連絡を取る決意を固める。

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