第153話 全てお見通し
理佳子の母、可奈子から薫に電話が鳴る。
「もしもし、可奈子姉ちゃん?」
薫が理佳子の母を姉ちゃんと呼んだのには、理由があった。理佳子の母がオバサンとは言わせたくなかったので、生まれた頃から透と薫には可奈子姉ちゃんと呼ばせていたのだ。
「薫、久しぶりねぇ。さっきたかちゃんから連絡来て薫が危険なことに巻き込まれてるって聞いたから、もし良かったらしばらく家であなたを預かろうと思って…」
「可奈子姉ちゃん、ありがとう…でもね、今私、小山内って彼の家にお泊まりに来てるの…」
その時吟子が薫に電話を代わるようにジェスチャーした。
薫は
「可奈子姉ちゃんちょっと待って…」
そう言って吟子に電話を渡す。
「あっ、もしもし~、小山内清の母の吟子と申します~。あの、かおりちゃんが何やらトラブルに巻き込まれて危ないって聞いたもので、もし良かったらウチがお預かりしたいと思うんですが、いかがでしょう?」
「いえ、そんな申し訳ないですわ~、薫はまだ小さい頃に母と生き別れになって、私が薫の母親代理のようなものなんですが…家で預かろうかって話をしたとこなんです~」
「色々事情があることは聞いております。もし差し支えなければ学校の事情もありますし、こちらでお預かりした方がかおりちゃんにとっても宜しいのではないかと…」
「そう言って下さるのであれば、薫の兄、透の方には私から話しておきますので、お願いしようかしら…」
「ええ!ウチは喜んでお預かり致したいと思います!」
「わかりました。それではよろしくお願いいたします。薫に代わって頂いてもよろしいですか?」
「はい…」
薫に再び電話が戻り
「もしもし?」
「薫、透には私が上手く話しておくから、くれぐれもご迷惑にならないようにね?」
「うん、ありがとう、可奈子姉ちゃん!」
そう言って電話を切った。
可奈子は薫の胸踊るような声に安心していた。きっとあちらのお母さんは薫に良くしてくださってるのね…出来るだけあの子が幸せを感じられる方向に好きにさせてあげたい…それがあなたの母に対してしてあげられる精一杯の誠意…薫…ごめんね…何もしてあげられなくて…
「お母さん!ありがとう!まさかそんな…本当にいいんですか?」
「かおりん、私の勘が働くの…あんた今…凄くヤバい状況に陥ってるでしょう~」
「お母さん…」
「私もさ…たくさん修羅場くぐってきたからわかるのよ…あんたがそれだけ感情的になってるのはただ事じゃないって…しばらくは大人しくしてなさい!」
「……」
「まぁ、どうにもならない状況になったら最悪私が何とかしてあげるわ!」
そう言って豪快に笑う。
薫も何となく安心して笑顔がこぼれる。
「はい。よろしくお願いします。」
やっぱりこの人凄い…全部お見通しって感じ…
「ただいま~、酒買ってきたぞ…高校生の息子に酒を買わせる不良主婦!」
「よく売ってくれたねぇ…」
「買いに行かせといて言う台詞かよ!」
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