第107話 悩んだ末に選んだもの
小山内はニヤニヤして考えている。
「黒ちゃん…クリスマスプレゼント決まったぞ!」
「ま、まさか…メリケンサックとか…」
「何でよ!かおりちゃんはか弱き乙女なんだぞ!俺が守ってやらなきゃ!」
こいつらの間に何が起きてるのかは知らないが…小山内の頭ん中では永遠に重森はか弱き乙女なのね…
「で?何にするの?」
「フフッ…それはヒミツだ!これはとっておき!!!かおりちゃんの喜ぶ顔が目に浮かぶぜ!」
そうかい、そうかい、好きにしてくれ…そんなことより理佳子へのプレゼント!
一方理佳子もクリスマスプレゼントに1ヶ月前から慣れない手つきで手編みのマフラーを編んでいた。
たかと君…喜んでくれるかな…初めてだから全然上手くいかない…何度も何度も失敗を繰り返して、やっとたかと君の分は完成したけど…自分の分が間に合うかどうか…
理佳子はお揃いで手編みのマフラーをプレゼントする予定だが、思うように進まず焦っていた。
たかと君…早く会いたい…
理佳子がボーッとした時、毛糸玉がコロコロっと床に転がってしまった。そこへすかさず猫のタカが飛び付いて来て毛糸玉を手でコロコロ転がして遊び出してしまった。まだ縫いかけの理佳子の分のマフラーから出た糸がどんどん引っ張られて、せっかく編んだ糸が途中までほどけてしまう。
「あぁあぁあぁ…いやぁ~ちょっと~タカ~やめてぇ~!」
慌てて毛糸玉を拾い上げてタカから奪う。タカはしばらく理佳子に遊んでもらってなかったので力をもて余している。理佳子が持つ毛糸玉をジーッと見つめてウズウズしている。
「タカ、これはダメ!もうあんまり日にちがないから…ごめんね」
タカはミャアオと鳴いてつまらなそうにどこかへ行ってしまった。
たかと君…
理佳子はデートの時に一緒に撮ったツーショット写真を携帯の画面で見ながらニヤニヤしている。
たかと君…一生私だけのもので居て…ずっと私だけを見てて…あなたの全てが欲しい…あなただけのものになりたい…
理佳子~、どんなものが喜ぶんだぁ?フクロウが大好きとか言ってたけど…フクロウって言ってもなぁ…
その時ふと目に飛び込んで来たのが
「これだ!」
俺は壁掛け時計がずらりと並ぶ時計専門店に立ち寄った。
その日の夜俺は理佳子にクリスマスの予定を煮詰める為に電話した。
「もしもし、理佳子か?」
「うん」
「クリスマスのことだけど…」
理佳子は胸がキュンとなり高揚する。
「うん」
「あのさ…またそっち行こうと思ってる…」
「うん、たかと君…」
「ん?」
「家に…来ない?」
「え?良いのか?行っても…」
「うん、お母さんにはいつもたかと君のこと話してるんだけど、昔のこと覚えてて懐かしいねって…たかと君の人柄はお母さん知ってるし、私からの話も聞いてるから全然大丈夫だよ」
「そうなんだ…なんか緊張するな…」
「それでいい?」
「あぁ、それは楽しみだな」
「わかった。じゃあそう言っとくね」
「うん、お母さんお父さんに宜しく」
「うん」
「理佳子…」
「うん…大好き…」
俺達は幸せな気持ちのまま電話を切る。
たかと君が家に来る…タカ!たかと君と久々に再会出来るよ!
ミャアオ…タカは目を輝かせてすり寄ってくる。
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