第102話 激変した薫

時は過ぎてあの夏の暑さが嘘だったように朝晩の空気はすっかり冷たく感じるようになってきた。


「もうすぐ冬がくるなぁ…」


天斗と小山内が登校中二人で歩いている。


「そうだなぁ…今年のクリスマスは何か良いことあるかなぁ…」


小山内がボソッと言った。


「そういや…お前…最近すげぇ重森と仲良くなってねえか?」


小山内はニヤッと笑って


「そう?そう見える?」


意味ありげな言い方をして濁す。


「お前ら…まさか…付き合ってんのか?」


「んん?んー…まぁ…なんつーかなぁ…」


「何だよ!いつからだよ?」


「そうだなぁ…あれは一年半前までさかのぼる…」


「いやいや、お前が告って玉砕したのは今年に入ってからだろ!」


「黒ちゃん…かおりちゃんって…すげえ乙女だぞ!」


「フン…知るか!アイツの本性知ったらそんな事言えなくなるぞ?」


「フン!黒ちゃんこそ彼女の何を知ってそんな事を言ってるのか…」


小山内は得意気に言った。


「彼女はな…実は…とんでもない大物だったんだよ…それを今は隠して…」


こいつ…重森の過去を知ってるのか?

その時後ろから


「小山内おはよう」


薫が小山内に挨拶した。これは明らかに今までの重森とは違う…いったい何があったんだ?


「?…かおりちゃん…おはよう!」


小山内も前とは何か違う…重森に遠慮してる感が全くない…重森が小山内の隣に並んで歩きだす。

チラッと重森の様子を伺う。

な…なんか…こいつ…恋する乙女みたい顔してる…あり得ん!そんなのあり得ん!あんなにツンケンしてたこの怪物が…いつの間にか女になってやがる…


「かおりちゃん、修学旅行楽しみだね!」


薫はちょっとにんまりした表情をしてる。

重森…いったい何を考えてそんな顔してんだ?

ちょっと気持ち悪いぞ!こ…こいつら…なんか気持ち悪い…中学生のウブな恋愛じゃないんだから…なに二人して…はにかんでんだよ…


天斗は自分と理佳子との事を棚に上げて小山内と薫のことを非難する。


「修学旅行かぁ…俺は理佳子が居ないからつまんねえなぁ…」


「黒ちゃん、ドンマイ!」


「何だよ急に上から目線で…」


「小山内、今日テストだよ?大丈夫?」


薫が小山内を心配して言った。


「はぁ~~~~~!ヤッベ…忘れてた…」


「しかたないなぁ…コッソリ教えてあげるから…これ赤取ったらまた追試だよ!」


「ありがとう~、かおりちゃん!」


マ…マジでキモい…お前ら…そういうキャラじゃ無かったよな…

俺は空気を呼んで


「わりぃ…先行ってテスト勉強してくるわ」


そう言って一人足早に学校へ向かう。


「ハニー…」


二人きりになって小山内が照れながらウインクして言った。


「フフッ、清…恥ずかしいじゃん…」


薫も照れてはいるが嬉しそうに言う。

薫がこれほどまで激変したのは、剛との甘い日々が恋しく、淋しかったからである。

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