第101話 剛の幻影
「剛…剛…お前…しっかりしろよ!…なぁ剛…誰かぁ!救急車呼べよ!早くしろ!!」
黒崎が叫んだ。
「天…斗…わりぃ…」
「もういい…しゃべるな…黙ってろ…」
「か…お…り…」
薫は意識が飛びそうになっている。
「………」
剛…剛…逝っちゃいや…絶対死なないって言ったじゃん…俺は不死身って言ってたじゃん…何で…何でなの?私は剛が居ないと…生きていけないって言ったじゃん…なのに…なんで…
薫は小山内の方へ振り返り
「小山内…いや…清…ありがとう…あんたの気持ちは十分わかったよ…前に待たせてた返事だけど…」
そう言って薫は小山内を見つめる。
「清…どんな時でも私を守って…そして…絶対に死なないで…それと…私は…清だけを見るから…」
薫の最後の言葉は消え入りそうなほど小さかったが小山内の心にはしっかりと突き刺さった。
「かおりちゃん…ウソでしょ!?マジで!?」
小山内は目をまん丸くして言った。
「私ね…去年最愛の人を亡くしたの…その人は凄く優しくて…強くって…私のことを…愛してくれていた…でも………」
薫はしばらく黙って
「でも私の目の前で死んじゃったの…」
小山内は黙って聞いていた。
「清には全部隠さず話すよ…私ね…前にレディース総長やってて…彼も族でさ…そういうのっていっぱい敵対勢力がいるからしょっちゅう抗争が起きてさ…それで…だから…もう愛する人を失う辛さを味わいたくないの…だから誰とも関わらないように生きてきた…」
前に片桐が言ってた言葉を思い出して全てが繋がった。矢崎…薫…
「もしかしてそれがきっかけで転校してきたの?」
薫はコクッと頷いて
「そのショックからレディース抜けて全てリセットしたの…って言っても未だに仲間達とは繋がってるけどね…私はか弱い女なんかじゃないけど…そういう全てを清は理解してくれると信じてる」
「かおりちゃん…かおりちゃーーーーん!!!」
小山内は薫の心境を全て察知しギュッと抱き締めた。
薫は小山内の厚くたくましい胸板に包まれ小山内の身体に腕を回して抱きついた。
薫はずっとずっと淋しかったのだ…ずっと剛の温もりに甘えたかった…もうそれは叶わない…でも…やっとあなたのことを忘れさせてくれる人が現れたかも…あなたのことはずっと私の心の奥にしまっておくよ…今はもう…この人が…その時小山内が
「大好きだよ…ハニー…」
小山内は優しく微笑んでそう言った。
薫は小山内から出た言葉に驚愕した。な…なんで?なんで剛と同じセリフを…清?…もしかして…剛が…
薫は小山内を通して武田剛の幻影を見た。
剛…ごめんなさい…そして…ありがとう…
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