第94話 小山内病院へ、そして壊れていく薫
「理佳子ちょっと待って、清原って小山内の連れからだわ」
「うん」
「もしもし、どうした?」
「黒崎さん!きよちゃんが!救急車で…」
清原はかなり動揺している。その声で俺は小山内がただならぬ状況に陥ってると直感した。
「どうした!何があった!」
「ヤバいよ…どうしよう…とりあえず救急車呼んで病院に運ばれたんだけど…今から俺も病院に行くんだけど…」
「清原!落ち着け!先ず何があったか話せ!いいな?」
「うん…俺ときよちゃんは高谷達の病院に見舞いに行こうと思ってバイクで向かう途中だったんだ…そしたら車の陰から急に子供が飛び出してきて…きよちゃんそれを避けてバランス崩してコケたんだ…」
「それで小山内が?」
「それはかすり傷で済んだんどけどな…」
何だよその前ぶりは…
「その後でまたバイク走らせてたら、この前、戦争の発端となった原が歩いててさ、その原が女の娘にまたちょっかい出してて…そこにちょうどヤバそうな野郎が現れて原がヤキ入れられてたんだよ…きよちゃん仲間意識強いだろ?だから止めに入ったんだよ…」
「それで返り討ちにあったのか?」
「いや、それはちゃんと丸くおさめたんだけどな…」
だから何なんだよ…今はそこまで話さなくていいだろ…こいつも小山内以上に天然なのかも知れない…
「じゃあ結局何なんだよ!早く結論を言えよ!」
「あぁ…それでちょっと寄り道して大きなスーパーで見舞いに何か買っていこうってなって、エスカレータで上ってたら俺達の前に若い女の娘がミニスカートだったからさ…きよちゃん興奮して鼻血出過ぎて出血多量に…」
「お前そこは話し盛ってるだろ!」
「バレたか?」
今そんな冗談言ってる場合じゃねえ…俺はイライラしてきた。
「それでジロジロ見てたら気付かれてな…その娘におもいっきりビンタ喰らってエスカレーターからきよちゃん転げ落ちちゃって…」
「やっぱバカなのか?」
「でも目の保養にはなったよ!」
「そ…そうな………んだ…」
ほんとはどんな色だった?とか興味はあったが…理佳子の手前、それ以上深く掘り下げて聞くことは出来ず…俺は咳払いをして
「で、小山内の容態は?」
「けっこうド派手に落ちたから流石に無事では済まないと思う…」
「わかった!その病院教えろ!」
俺は一旦電話を切った。
「なぁ、理佳子!すぐに重森に電話をしてくれ!小山内が救急車で病院に運ばれたらしいんだ!」
「うん、わかった。これから小山内君のいる病院に行くのね」
そう言って理佳子は薫に電話をかけた。
「もしもし理佳子?」
「もしもし、薫!今たかと君の家に居るんだけど電話があって、小山内君が怪我をして救急車で病院に…」
薫はそれを聞いて動揺した。小山内が…小山内は大丈夫なの?アイツ…もしアイツの身に何かあったら…薫は自分でも信じられないほど心から小山内の身の心配をしている。
「わかった…その病院教えて…すぐに…向かうから…」
薫は声を震わせながらそう言った。このとき薫の中にあるトラウマがよみがえっている。そして、理佳子がたかとと一緒に居ること、自分が小山内の話でこんなに動揺することに、一気に自分の中の色々な想いが交錯し、自分で自分の心の整理がつかなくなってその場に座りこんでしまった…
そして…ここから…ゆっくり壊れていく…
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