第89話 夢の中の事件
「重森、今日はお疲れ様」
小山内達と別れて薫の仲間のバイクで家まで送ってもらった。
「重森、お前の特訓すげぇ助かったよ。もしあれがなかったら俺はなす術もなくただ逃げ惑うことしか出来なかった…ありがとな」
「まだまだ本物には天と地ほどの差があるけどね…でもほんと頑張ったと思うよ」
「重森…向こうの黒崎のこと知ってんのか?」
「…私も過去にいろいろやってきたからね、ここら辺の裏も表もみんな知ってる…今はただの…か弱い女の娘だけど…」
「お…お前…自分で言うか?」
そのとき薫の仲間達も後ろを向いて肩で笑った。
「お前ら!今笑っただろ!」
「いえいえ…恐れ多くてそんなこと…」
「どこがか弱い女の娘なんだよ…みんなビビってるじゃねーか…」
俺は聞こえないほどの小さな声で言ったつもりだったが
「うっせー弱虫!」
こわっ!やっぱめっちゃこわっ!
「じゃあな、次は二学期だな」
「うん…じゃあね…」
薫達はバイクで去っていった。俺は家に入り風呂に入って自分の部屋に戻りベッドに横になる。
「疲れたなぁ~」
独り言を言って携帯を持つ。
そういや理佳子…じいちゃんどうなったのかな…
俺は理佳子に電話をかける
「もしもし、理佳子か?」
「うん」
「久しぶりだな」
「たかとくん…淋しいよ…ずっと連絡くれなくて…」
「ごめんごめん…ちょっと最近ゴタゴタがあってな、忘れてたわけじゃないんだぞ?」
「たかとくん…おじいちゃん亡くなって私もバタバタ忙しかったの。それで転校の話しは昨日お母さんにしたんだけど…」
俺はゴクッと唾を呑み込みその話しを待った。
「やっぱりそう簡単には転校させることは出来ないって言われちゃった。やっぱり薫のとこに行くにしても心配もあるし、何か理由がないとって…でもね、たかとくんのことはお母さんも賛成してくれてるの。たかとくんの人柄、お母さんも知ってるから…」
「お…おう…そうか…」
「たかとくん…また近いうち会いたい…」
「うん、俺も会いたいよ。少し待ってくれ、必ず会いに行く」
「うん、ありがと…」
「理佳子…お前のこと…好きだぜ…」
「うん…私も…大好き…」
「じゃあ、また電話する…」
「うん…」
そう言って電話を切った。
好きだぜ…大好きだ…そうだな、愛してると言っても間違いじゃない…理佳子…お前との将来…
理佳子のことを考えながらあまりの疲れに俺は眠りに落ちていた。
俺は夢を見た。理佳子が見知らぬ男達に絡まれてる…理佳子は嫌がっているのに男達がしつこく絡んで離さない。理佳子は恐怖で泣いている…たかと君…助けて…
ガバッ!
俺は理佳子の助けを求める声で目が覚めた。
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