第87話 惚れ込んだ男の頼みなら
二人は病院に到着した。病院には片桐にやられた高谷耕介たかやこうすけ、千葉勝男ちばかつおが入院している。高谷はあばら骨骨折で重傷、千葉も足首骨折で重傷と痛々しい怪我をしていた。
他にも吉田友介よしだゆうすけ、赤坂昌利あかさかまさとし、大田和也おおたかずや、清原勇樹きよはらゆうきと地元では名の知れた面子だが、今はみんな小山内の側近で、それぞれ大なり小なりの怪我をして病院に来ていた。そして高谷、千葉の病室にこの顔ぶれが全員揃っていた。
小山内と片桐は病室の前で
「小山内…俺…やっぱ合わせる顔がねえょ…」
急に弱気になる。
「片桐、お前のやったことはもう消えねえ…だけどな、男ならどんなときでも、どんなことにも逃げちゃいけねえよ。自分の行動に責任取れないなら最初からやるな。やったんなら最後まで覚悟決めろ!」
小山内は片桐の肩をポンと叩いて病室に入る。
「おぉ、みんな揃ってるな!高谷、千葉、怪我は大丈夫か?」
一斉に小山内の方を向き
「きよちゃん!また来てくれたのか、悪いな」
高谷が言った。
「きよちゃん、片桐のやつどうなったんだ?」
千葉が言った。
小山内は廊下に目をやり
「実はな、お前達に話がある…」
そう言って廊下に隠れている片桐を手招きした。そーっと現れた片桐を見て一斉に
「てんめぇ!どういう神経してやがる!」
「きよちゃん、これどういうことだ!」
「お前何しに来やがった!」
小山内はその場でいきなり土下座をした。
「みんな済まない!今回俺と片桐の個人的なことでお前らにこんな酷い目に合わせたことは本当に申し訳ないと思ってる!どうかこの通り…」
そう言って土下座しながら頭を床に擦り付ける。
「きよちゃん!どういうことだよ!何できよちゃんが謝る!俺はあばらやられてんだよ!」
高谷が言った。
「俺だって足首やられて歩けねーんだぞ!」
千葉も激怒している。
「俺は拳潰されたぞ!」
「俺は右目やられた!」
「俺だって首やられたよ!」
「俺は…深爪した…」
一斉に清原勇樹の顔を見た!
「そりゃお前が悪い!」
全員声を揃えてツッコミを入れる。
「わかってる!お前らの痛みは俺の痛みだ!お前らが納得いかないなら全部お前らと同じ痛みを俺は受ける!あばらも、足首も全部お前らと同じ怪我を俺は一緒に受ける!だから…頼む…片桐のことを…片桐を…もう一度仲間だと受け入れてやってくれねぇか…頼む!」
小山内はずっと頭を上げずに懇願する。
それを見た片桐も小山内の隣で土下座した。
「みんな…本当に申し訳ない…許してくれなんて都合のいいこと言うつもりはねぇ…どんなに恨まれても仕方ないとわかってる…ただ俺は…お前達に謝りたくて…謝って済む問題じゃねーことはわかってる。許してもらえなくても…謝りたかった…本当に申し訳ねぇー!」
一同この土下座している二人に対して沈黙している。
みんな小山内に絶対的な信頼を寄せている。だからこそ小山内がここまで懇願する気持ちを理解しているのだ。片桐に対しての怒りは変わらない。しかし小山内が引かないことも知っている。もし許さなければ本当に自らあばらも足首もやりかねない男だ…そんな仲間を想う小山内にみんなは惚れ込んできたのだから、片桐を許さないわけにはいかない…
「なぁ、片桐…ここでお前を許したとして…お前だけ何の痛みもなしじゃあ俺達の怒りはどこにぶつけりゃ良いんだよ…」
高谷が言った。
「高谷…それはこれから片桐が想い知ることになるんだ…」
小山内はガラスの代償が高く付く事を片桐には言ってない。小山内の母ちゃんは昔、ヤクザも恐れるほど筋金入りのヤンキーだった。後に片桐は地獄を見ることになるのであった…
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