第86話 橋本の想い
俺達は倒れている仲間の元へと戻った。動けるやつはそれぞれの仲間を肩に担いだりおんぶして俺達を待っている。
橋本も座り込んでいた。
片桐が
「橋本~、俺達は完敗だ…やっぱアイツらにはかなわねぇなぁ…」
そう言って片桐が橋本に手を差し出し立たせた。
「片桐…お前の中の決着はついたのか?」
橋本がそう言った。片桐は動揺している。
「片桐…お前…戻りてぇんだろ?小山内の所へ…行っても良いぞ…」
「橋本…お前…」
「わかってたんだよ…いつもお前が小山内の話ばかりするからよ…だからお前の心の決着つけに俺も付き合ってやりたかったんだよ」
片桐は大きすぎる男達に脱帽した。男になりてぇ…本物の男になりてぇ…いつかこいつら超える男に…
片桐は目に溜まった涙がこぼれる前に手で拭って
「橋本…俺はお前の参謀だ!地獄の底までお前と一緒だ!」
そう言って小山内の方を振り向きコクッと頷いた。
小山内もそれに応え頷く。
「橋本…次はもっと強い絆でみんなをまとめて今度こそ小山内の器を超えるぞ!」
橋本はニヤッと笑って小山内に
「小山内…お前、俺のこと愛も何も無いって言ったけどな…俺は俺のやり方で仲間を想ってんだよ!」
小山内が
「橋本…片桐を頼んだぞ…」
「任せとけ!お前と一緒にいた時間よりも良い夢みさせてやるよ!」
そう言って小山内と橋本はお互い顔の前で手をガシッと繋いだ。
「じゃあな…」
小山内が橋本に向かって言った。
「おう…またな…」
橋本も応える。
全員が解散して帰る途中、
「そういや、この戦争の発端の当事者って…どこにいるんだ?」
俺が小山内に尋ねる。
「あいつかぁ?んー…」
そのとき駅で若い女性をナンパしてる原の姿が目に入ってきた。
「はぁーらぁー、てめぇ~!」
そう言って小山内は原に向かって全力で走っていった。原は小山内の鬼の形相を見て慌てて逃げ出す。
「きよちゃんごめーん!どうしたの?その顔ぉ~」
原は必死に走りながら血を流してる小山内の顔を見て聞いた。
「お前が引き起こした戦争なのに何でお前はのうのうとナンパしてんだコラァ!俺にもそのナンパ術伝授しろぉ~!」
薫がそれを見て
「たかと…やっぱあいつは男の中の男だな…結局頭の中は女かよ…」
重森…恐いぞ…その顔…
薫は恐ろしい形相で小山内の裏切りを見ている。
俺はこの後の小山内の悲劇を想像し、心の中で手を合わせていた。
その日の夕方、小山内と片桐は病院で仲間達を見舞いに行った。
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