第84話 戻って来いよ
小山内は自分の力を誇示するために拳を奮うタイプではなかった。あくまでも相手が自分に危害を加えてこない限り、そして仲間を傷つけられない限りは小山内から喧嘩を仕掛けることは絶対になかった。しかし片桐にとっては常に小山内に勝ちをもたらせなければ自分の存在価値がなくなる…片桐にとって小山内は少し物足りないものを感じるようになる。
そして片桐は他校の橋本達也に小山内が攻めこむという噂が伝わるように策を練った。その作戦は上手くいき橋本達也が激怒し小山内の元へ攻めてきた。小山内は何も知らず片桐からまるで相手から攻めてきたと思わせるように言いくるめられた。当然小山内は橋本達也達に迎撃態勢で応戦する。そして準備万端の橋本達に仲間を何人も傷つけられてしまう。
激怒した小山内は鬼神のごとく敵をなぎ倒し橋本も小山内の下に倒れることになった。
そして橋本の口から思わぬ言葉を聞くことになる。
「小山内…てめぇ…絶対許さねぇぞ…俺の相棒を袋にしてくれた恨み…いつか必ず晴らすからな…」
小山内は橋本が何を言ってるのか全く心当たりが無い。そしてこの事件の真相を知ることになる。小山内は裏切り行為を絶対に許さない。そして片桐は居場所をなくし転校することになる。
「片桐…俺はお前のことを心底信頼してたんだ…お前のお陰で今の俺があるんだ…お前が居なきゃ俺はこんなに仲間が居なかったかも知れねぇ…でもな…お前はその仲間をお前自身が傷つけたんだよ…お前一人の自分勝手なワガママでな…」
重森と俺は小山内達の後を追ってきた。重森の仲間が小山内の行動をちゃんと偵察していてくれたからすぐに居場所はわかった。重森の仲間の連携はまるで訓練されたかのように統率が取れている。これが重森の情報収集能力なのだ。
俺達は小山内と片桐のにらみ合いを見守る。
「小山内…お前には俺の気持ちは理解出来ねぇよ…お前みたいな恵まれた奴には俺のコンプレックスは理解出来ねーんだよ…俺はお前にずっと認めてもらいたかったんだ…お前が俺を軍師と呼んでくれて…みんなも俺に一目置いてくれるようになって、でもお前はてっぺん取ったら欲を失くして俺の頭脳を必要としなくなって…だから、俺は…俺は…また必要とされたかったんだ…お前の役に立ちたかったんだよ…
「片桐…俺は今でもお前を必要としてるよ…やっぱ俺の横にはお前が居ないとダメなんだよ…俺、頭悪いからよ…お前が俺の頭脳になってくれなきゃ俺何も出来ねーんだよ…」
片桐は小山内の言葉に涙がこぼれた。
「なぁ片桐…戻って来いよ…また一緒に楽しくやろうぜ…」
「小山内…もう無理だよ…お前の側近みんな潰しちまった…お前が受け入れてくれてもアイツらにはもう会わせる顔がねぇよ…」
その時小山内は大きく息を吸ってでっかい声で
「そんなの俺がお前の代わりにいくらでも頭下げてやるわ!!」
それは片桐の心に強く突き刺さり後悔の念から号泣してしまう。
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