第50話 複雑な心境
確かに以前強面集団に絡まれた時にいとも簡単にあの大柄の奴ら投げ飛ばしてたよな。
あれが合気道の技か…
あれならそれほど力使わず倒せるのか。
それから毎日投げられ続けた。
そして少しわかったことが…
俺の攻撃に合わせて俺の力を利用し倒されてる…つまり静の動と言ったところか…
そもそも合気道って護身術だよな?
なるほど、何となく掴めて来たぞ!
「教えてくれ!合気道の技を!」
それから数日、俺は重森にみっちり合気道の技を習った。
朝から晩まで河川敷で特訓したお陰でだいぶ基礎は学べた。
「じゃあ、次は突きとか蹴りだね。これも実際受けて覚えて!」
たかと…わりと根性あるじゃん…どんどん吸収していく。こんな成長速い人初めて見た。
もしかしたら1ヶ月も要らなかったかな…
それから俺は空手の技を教わった。
習うより慣れろ…とにかくやられて覚える。
だけど不思議だ…段々と重森の動きの速さに慣れてきたのか攻撃を交わせるようになってきた。
やっぱりバッティングセンターの地獄の特訓が実を結んだのか?
たかとの奴…段々私の動きに付いてこれるようになってる…こいつ…ほんとはかなり才能あるんだ…
兄貴は昔…アイツは心根が優しすぎる。だから喧嘩には向くタイプじゃない。でも、その優しさ故に守りたいものがある時、きっと覚醒するだろう。
私はあの時その言葉の意味がわからなかった…
ただの弱虫だと思ってたから…
数日後…
「今日はここまでにしよ!」
重森が少し息を弾ませそう言った。
すっかり夕暮れ時になっていた。
「ありがとう、なんか俺…少し前よりだいぶ強くなれたような気がするんだけど…」
「はぁ?何言ってんの?まだまだこれからだよ?
「ま、まぁそうなんだけど…ちょっとは変わっただろ?」
重森は無言で振り返り俺に背中を見せた。
「たかと…明日ダブルデートの日だね…」
ドキッ…すっかり忘れてた…この特訓に夢中になりすぎて日が経つのを忘れてたぞ!
ヤバっ…理佳子に全然連絡してねぇ…
今日夜に理佳子に電話しないと…
「そうだったな…すっかり忘れてたわ」
「小山内…誘っといてね…」
「おう」
「小山内…」
重森はそう言いかけて止めた。
重森…何を言いかけたんだ?
俺はそっと重森の顔を覗きこむ。
重森はうつ向いて何か物思いに耽っている。
「どした?」
「別に…」
「そうか?何か変だぞ?」
「さ、帰ろ…」
「おう、ありがとな」
重森はさっさと先に歩いて行ってしまった…
何だあいつ…今日は何か変だな…
「たかと…」
「ん?」
「小山内…番号教えて…」
「お…おう…」
そして俺は小山内の番号を重森に教えた。
重森…お前から小山内にかける気か?
そりゃあいつ超絶喜ぶぞ!
もしかしたら失神するかも知れないぐらい(笑)
見てみてぇなぁ…小山内が歓喜のあまり気を失うところ…
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