第49話 新たなる試練

重森はバットを持ったまま俺のすぐ横に立った。


「バッターボックス立って」


素直にバッターボックスに立つ。


バシュッ!


ボールが飛んでくる。俺はそれを見送るが全く感覚が違う。

自分めがけて飛んでくる球と横を通る球では、全く体感速度が違う。


「どう?」


どう?ってここなら全然平気だ。

間違いなく当たらない場所だからな。


バシュッ!


もう一発飛んでくる。

その時重森がバットの先で俺の脇腹を突いて押してきた!


「痛っ!」


俺は思わずバッターボックスの真ん中に入ってしまった!

球はすぐ俺の目の前…


ドフッ


お…れ…の…脇腹…に…直撃~?

何てことしやがる…


「そのくらい我慢しなさい」


そ…そのくらい!?

バカヤロー…これがそのくらいってレベルかよ…マジであばらいったぞ…

俺は痛くて苦しくて息が出来ない…


「人の痛みを知ることも大事だよ」


そ…それ…を…お前…が…言うか?


「もう…無理だ…息が…出来ん…」


「そんなんじゃ理佳守れないよ」


二言目にはそれを言うが…痛いものは痛いんです…

もう勘弁してくれ…


「ほら、よそ見しない!」


バシュッ!


ヤバい…逃げ遅れた…


ボフッ


今度は…腹に直撃…

俺は前のめりに倒れた。

このままじゃ…ほんとに死んじまう…


「私のフルスイングとあの球とどっちがいい?」


こいつ…目が座ってる…マジなのか…

くっそぉ~…どっちにしても殺される…

だったらやってみるしかないか…

俺はまたバッターボックスの真ん中に立って


バシュッ!


目を閉じて集中…気配で…来た!


フォッ


ガァーン後ろの金網に当たる。

人間死の瀬戸際に立たされると…こんなことが出来ちゃうのか。


「やれば出来るじゃん」


重森が言った。


やればって…やらなきゃ殺されるからだろ!

だが、出来ないと思うから出来ないんだ。

人間やる気の問題だよな!


それから100キロを10連続交わす特訓が1週間続いた。

そして俺はとうとうマスターした。

原型がないほど顔を腫らして…


「やっと次の特訓行けるね」


おい…ちょっと待ってくれ…こんなにあちこち負傷してるのに…いきなり次の特訓って…


「じゃあ次河川敷行くよ」


俺と重森は人通りの少ない河川敷に着いた。

そこは草がちょうど刈られて下はクッションのようになっている。


「これから投げ教えるから受け身取ってね。投げられて技覚えなさい。じゃあ力一杯どんな攻撃でも良いからかかってきて!」


顔面の次は全身かよ…もう身体持たないっス…

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