第47話 何のための特訓?

すげぇーな…

やっぱ言うだけのことはある。

俺はもう一度真ん中に立って構える。

あれが出来れば…あんな神業が…

来い!


バシュッ


俺の目の前に大きな球が見える!

避けろ!


ガァーン


俺は後ろにぶっ飛んだ!

避け損ねて額に直撃した…

俺の脳が揺れてのうしんとうを起こし倒れた。

頭がクラクラする…

だ…ダメだ…起き上がれない…脳が揺れて目がぐるぐる回ってる。

どうしたら重森のように交わせる…

やってみてぇよ。

あんなカッコ良くやってみてぇ…

俺はやっとの思いで立ち上がる。次の瞬間…

目の前に球が飛んで来ていた。


バァーン!


俺は当たる直前に交わしていた。

それは無意識だったが条件反射で交わせた。

そうか!もっと力を抜くんだ!

構えすぎて余計な力が入りすぎるから避けられないのか!

そういえば重森も無駄な動きが一切無かったようだ…

よし、やってやる!

次こそ紙一重で…


バシュッ!


俺は静かに構えた。

来る!無駄な動きを無くし…交わせ!


ブンッ!


俺の耳元をすり抜けて行く音が聞こえた。

出来た!これは間違いなく成功だ!

俺は重森を見た。

重森が…重森が…親指立ててこっちを見てる。

よし!これだ!

俺は調子に乗って次の球に備える…

落ち着け~、落ち着け~…

さっきの無の境地だ!


バシュッ!


来る…来る…来る…来る~!


ガン…



よ…よけれ…無かった…

俺は紙一重を狙いすぎて交わすのが遅れてしまった。

右頬に当たってしまった…

みるみる顔が腫れていく…

こんなんで10連続なんて…とても無理だ…

それでも重森は全く止めてくれる気配がない…

やるしか無いのか…

顔も右腕もズキズキする。

耳がボォンボォンボォンボォンとけたたましく鳴り続ける。


バシュッ!


くっそぉ…痛みで集中出来ねぇ…


バァーン!


ダメだ…逃げてしまった…逃げちゃダメなんだ…

本気で交わすつもりで行かなきゃ。

その時重森が


「何の為に特訓してるかわかる?何の為に強くならなくちゃいけないか。」


何の為にって…何の為だっけ?


「もし、理佳が誰かに襲われたらどうする気?」


俺はハッと目が覚めた!

そうだな、そうだった!

俺はあいつを守る為に、あいつを守れる力を付ける為に今こうして…


その時


バシュッ!


やべぇ…来ちまった…

俺は目を閉じた。そして理佳子の顔を思い浮かべる…

あいつがいつも笑えるように…

そして俺は目を開けた!

目の前に球が!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る