第46話 正に神業

80キロ…ってどんだけ速いか想像付かねぇ…

俺のこめかみ辺りから汗が流れる…

避ける…ギリギリで…ギリギリってどこまでがギリギリなんだ…


「行くよ!」


マジかー!

俺はゴクっと生唾を呑み込んだ。

バシュッという音が鳴り球が凄いスピードで俺にめがけ飛んでくる!

俺はすぐに避けてしまった。


ガン!


後ろの金網に球が当たり跳ね返る。、

ヤバッ!あんなの当たったらただじゃ済まないって…

俺はチラッと重森を見た。

重森はめちゃくちゃ睨んでる!

わかってるよな!そう言わんばかりだ。

次の球が飛んでくる。

俺は集中して球を見た。

また俺はすぐに避けてしまった。

だ…ダメだ…恐くてギリギリまで待てん!

チラッと重森を見た瞬間重森が立ち上がるのが見えた。

俺は急いで両手を重森に向けて


「わかった、わかってる!ちょっと待って」


そう言って重森を制止した。

俺の背中にも汗が流れる。

マジでやらなきゃ球より恐いヤツが来る。

落ち着け…落ち着け…ギリギリまで…

次の球が飛んできた!

ギリギリ…ギリギリ…避けろ!


ドン!


痛ってぇ~!痛ぇよぉ~!

避けそびれて右腕に当たっちまった…

右腕に力が入らねぇ…腕がズキズキする…

それでもすぐにバッターボックス真ん中に戻った。

まるで針のむしろだ!

集中だ!集中…相手のパンチより速く動いて避ける…喰らわなきゃ痛く無いんだ…

そう自分に言い聞かせる。

次の球が飛んできた。


バァーン!


後ろの金網に球が当たった。

今度はだいぶギリギリまで引っ張れたか…

チラッと重森を見る。重森が首を振っている。

あれでまだまだか…

だが…少しスピードに目が慣れてきた。

今度こそ決める!


バシュッ…


まだだ!まだ引っ張れ!

ここだ!


バァーン


どうだ!これはかなり際どいとこまで引っ張ったぞ!

重森どうだ!重森はまた首を振っている…

嘘でしょう…あれは紙一重だったって!


「今のはマジギリギリだったぞ!」


思わず俺は声を上げていた。


「あのさぁ…そんなんじゃ相手に殺して下さいって言ってるようなもんだよ?もっと相手を引き付けてからじゃなきゃ!」


マジか!俺的にはそうとうギリギリだ!

そんな事言うんならやって見せろよ!

俺は心の中で叫んだ。

その時重森が立ち上がり


「いい?よーく見てな」


そう言ってバッターボックスの真ん中に立った。少し球の角度を上げて顔にめがけ飛んでくる設定にした。


そして…


バァーン!


重森は顔面に当たるか当たらないかの超ギリギリラインで難なく首を横に振ってその球を交わして見せた!

正に神業!

俺は言葉が出ない…

まるで息をするように自然にやってのけた。

これが…こんなことが…出来れば…

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