第44話 最高の相棒

理佳子の家に戻ると小山内はバイクに跨がったままタバコをふかしてる。


「小山内!待たせたな」


俺は小山内に手を振ってそう言った。

小山内は無言で俺にニヤリとしながら指を指して来た。


お前…マジで良いやつだな…カッコいいよお前…

俺もいつかお前みたいな男になりたいよ。


理佳子も


「小山内君、今日は本当にありがとうございました。お陰でたかと君とゆっくりお話しすることが出来ました。今度は薫とダブルデートですよね?」


小山内は顔をクシャクシャにして照れてる。

理佳子にも恥ずかしそうにサッと手を上げて挨拶した。


「理佳子…いつでも電話してくれ」


俺は振り返ってそう言った。


「うん…淋しくなったらすぐに電話する…多分毎日(笑)」


だいぶ明るい表情になってる。遠く離れても会えない距離じゃない。


「理佳子…いつでも会える距離だ。淋しくなったらいつでも言えよ」


「うん…もう泣かさないで…私の身体の水分全部無くなっちゃう(笑)」


「おぅ(笑)…またな!」


俺は理佳子の頭を撫でておでこにそっとキスした。

そして小山内の後ろに乗りヘルメットを被った。

小山内が


「もう良いのか?」


「あぁ、ありがとな」


小山内もヘルメットを被りバイクのエンジンをセルを回してかける。

爆音が鳴りエンジンがかかった。

俺は理佳子にそっと手を振る。

理佳子も手を振りながら俺達を見送る。


いつでも会える距離…なんだ…すぐに…だから淋しくないよね。

ありがとう…たかと君…



俺は時計を見た。もう日付が変わっている。

小山内は帰りも高速を飛ばしている。


そういや明日…つーか今日重森の地獄の特訓が待ってんじゃねーか!

俺の興奮が一気に冷めるほどの恐怖の予感がしてテンションが下がる…

小山内には悪いがマンツーマンでしごかれるんだよなぁ…

でも…いつまでも偽物で居るわけにもいかんよなぁ…

本物を超える本物になりてぇ!

この前の小山内や重森みたいにいざと言うとき守りたい者を守れる強さが無いと、もし理佳子に何かあったら俺…いや、絶対本物になろう!

俺はそう決意した。


俺の家に着いて小山内は


「じゃ、またな!デートの日程は決まったの?」


「あぁ、8月第1土曜日だ」


「そっか、わかった」


「小山内…」


俺はバイクを降りて小山内をじっと見つめる。


「小山内、お前最高だよ」


小山内はヘルメットを被っていたが照れてるのがわかる。

黙って親指を立てアクセルを吹かし走り去った。

俺は家に入りベッドに寝転がり理佳子の唇の感触を思い出してニヤけている。

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