校内一の美人な先輩元カノに結婚しようと言い寄られて困っています!

はろ

第1話

5時限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いてか

ら、しばらくしてからの事だった。


「ねえ、起きて」


ふと、前の方から聞き覚えのある声が聞こえた。


その声はとても元気で可愛いらしい声だ。


「うぅん...。」


机に伏せていた顔を声のする方に上げると、そこ

にはモデルではないかと思うほどの美人が立って

いた。


その美人と目が合い思わず俺は目を見開いて驚い

いた。


彼女の名前は深見 千早希ちさきという。


なんせ彼女は、校内一の美人と言われている全男子の高嶺の花だ。年は一つ上の先輩で身長は一六四センチぐらいで、綺麗な黒髪ロングだ。成績優秀、誰に対しても隔たりのない性格、スポーツ万能の才色兼備。男女問わず人気のある彼女が、平凡な俺なんかに話しかけているのだ。


当然、驚くに決まっているだろう。


「な、何か用?」


清正きよまさくん今日一緒に帰ろ!」


なんとこの美人は、俺と一緒に帰りたかったようだ。


こんな美人から俺なんかに一緒に帰ろうと誘われているのだ。断る奴がいるのなら、そいつはきっとどうかしている。


そして、俺の口は瞬時に言葉を発していた。


「断る」


と。何故かと言うと、信じられないかもしれないが彼女は一ヶ月前に付き合っていた


元カノだったのだから…





俺の名前は鹿島清正かじまきよまさ。自分で言うのもなんだが、俺は結構モテるらしい。今まで告白された回数は数しれず。


なーんてな。


悲しいことに俺は全然モテない。そんな俺でも一人だけ付き合ったことがある。そう。それが、校内一の美女と言われる深見ふかみ千早希ちさきだ。


俺は地元の公立高校に通っている。一年生の時は何事もない学校生活を楽しんでいたのだが、二年生の初めに深見千早希に告白されたのである。初めは罰ゲームか何かかと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。


なのだ。


返事は勿論OKだ。


なんやかんやで、楽しい青春を送っていたのだが俺から別れを切り出したのだ。


なんでかって?


それは…


「ねー帰ろってばー」


深見が俺の腕を揺すりながら言う。


「聞いてる?清正くん?」


「もう分かったよ」


「やったー!」


ここで拒否しても無駄なことは分かっている。ならば、速やかに言うことを聞いた方がいい。


「あの…ちょっとお手洗い行ってきてもいいかな?」


深見が体をモジモジさせながら言う。


「はいよーごゆっくりー」


「先に帰んないでよね」


「帰らないから早く行ってこい」


「ありがとう!」


そういって深見は教室を出て廊下を歩いていった。


「はぁ」


俺は小さいため息をしながら、鞄に手を伸ばす。夏休み明けにテストがあるので、少しでも進めておきたい。すると、廊下の方から足音が聞こえてきて誰かが近づいてくる。戻ってきたのか?そう思っていたら、どうやら違ったみたいだ。


「鹿島くんっ」


鹿島くん。俺の事をそう呼ぶのは同じクラスの辻村つじむらあかねだ。彼女もかなりの美人だ。身長は一五〇後半の髪型はセミロングだ。


「まだ残ってたんだね」


「ちょっと人を待っててな」


「そうなんだ」


「辻村は何してたんだ?」


何冊かの本を持っていてたので、おおよそ検討はついていたが聞いてみた。


「あ、うん。私は委員会の仕事で」


「確か図書委員だったよな」


「うん。今日、当番の子が風邪でお休みになっちゃったから私が代理で本の整理をしてたの」


恐らく当番の人が休みと聞いて自分から代理をやると言ったんだろう。


「辻村って優しいよな」


「えっ?なんで?」


辻村が驚いたような顔で言う。


「自分から代理引き受けたんだろ?」


「うん…よく分かったね」


「偉いよなぁ〜俺なら面倒でやらないけどな」


「そんなこと言って鹿島くんも頼まれたらちゃんと引き受けるタイプでしょ?」


確かに断ったことは無いが。


「さあな」


俺は白々しくそっぽを向いて言った。


「ふふっ」


辻村が口に手を当ててクスッと笑う。


俺は辻村と他愛のない話をするこの時間がとても好きだ。恋愛感情とかではなく、一人の友人としてとても好きだ。


「あのさ、鹿島くん」


「ん?どうした」


「今度さ、一緒にテスト勉強やらない?」


「テスト勉強?」


辻村は学年の中でもかなり頭がいいほうだ。ぶっちゃけ一緒に勉強してくれると助かる。


「良いけど、俺が教えてもらうことになるぞ?」


「うん。それでもいいからお願いできない?」


「ああ、こちらこそよろしくな」


「やった!ありが…」


辻村の言葉が遮られる。


「清正くん!お待たせ…ってねえ、何してるの?」


深見が戻ってきたようだ。話に夢中になってて足音に気づかなかった。


「ねえ、清正くん何してるの?」


俺はその声を聞いて背筋が凍った。明らかに冷たい感じの声色だった。


「あーいや、その」


俺はゆっくりと深見の方を向き目を合わせた。その瞳は光を失ったかのように暗くどんよりとしたように見えた。ああ、やばい。怖い。


「それで、その子は?」


深見は辻村の方を見て言う。


「鹿島くんと同じクラスの辻村茜と言います」


「そう。茜ちゃんって言うんだ。可愛い名前だね」


「あ、ありがとうございます…」


辻村は少し怯えているように見える。まあ無理もない、俺でも怖いのだから初対面だったたら怖いの何者でもない。


「それでーなんの話ししてたの?」


「今度テスト勉強したいなって話してました」


すると、深見がニコッと笑う。


「そーなんだ。じゃあ私も一緒に教えてあげるよ!」


「本当ですか?じゃあお願いしたいです。」


「うん、いいよーいつにしよっか?」


「じゃあ今度の日曜って大丈夫ですか?鹿島くんも」


日曜は、特に用事もない。


「ああ、大丈夫だ」


「日曜なら私も大丈夫だよ!じゃあ今度の日曜日に」


勉強会は日曜日に決定した。せっかく頭のいい二人がいるから、ちゃんとするか。


「それじゃあ、茜ちゃん私たちそろそろ行くね」


深見が俺の腕を引っ張る。


「ちょっ、辻村ぁまたな」


「うん。またね鹿島くん」


辻村が言うと同時に俺は教室を出た。腕はまだ引っ張られている。


「そろそろ離せって」


「もう照れちゃって仕方ないなー」


深見は俺の腕を離す。


「いや別に照れてるとかじゃ」


「あのさ、この後私の家来てよ」


「へ?深見の家に?」


「そうだってば。ね、いいでしょ?」


うん。なんか嫌な予感するから断っておくのが一番だろう。


「あ〜そういえば今日俺が飯当番だったわー。悪いけど、すぐ帰えらなきゃ」


この辺が無難な断り方だろう。まぁ普段は俺が飯を作っているんだが、今日は作らなくていいことになっている。


「嘘だよね。ご両親海外出張で今家にいないって知ってるよ。あと、妹の紗良さらちゃんも今日友達の家に泊まるってさ」


おいおい。この人なんで、うちの家庭の事情知ってるんだよ。しかも妹が泊まりとか俺でも知らなかったんだけど。


「なんで妹が、泊まるって知ってるんだ?」


「さっき紗良ちゃんにメールしてきいたの」


「そうだったな。アドレス交換してた気が」


「うん。それで良いよね?私が晩御飯ご馳走するからさ」


「手作りか?」


思わず、聞いてしまった。深見の作る料理はマジで上手い絶品料理だ。まあ、お腹も空いたしご馳走になろうかな。言っておくが、別に飯に釣られてる訳じゃないからな。


「そうだよ。私の手作りだよ」


「じゃあ深見の家にお邪魔しようかな」


「前みたいに千早希ちさきって呼んでよ!清正くん」


付き合ってた時は、名前で呼んでたっけな。


「分かったよ。千早希」


「嬉しいな。そうだ、スーパーでお買い物したいんだけどいい?」


「おう!荷物持ちなら任せな」


「じゃあ近くの商店街に行こっか?」


「そうだな丁度そっちの方面だしな」


「清正くんは何食べたい?」


色んなご飯を食べたいが、今の気分は…


「んー、じゃあ肉じゃが」


「肉じゃがね。大きいじゃがいもいっぱい買わなくちゃね」



長い坂を下って行くと、商店街がある。そろそろ夕飯時だから、商店街も賑わってるだろうな。そんなことを千早希と話していたら十分位で商店街に着いた。


「千早希、最初どこに行く?」


「それじゃあ、最初にお肉屋さんで、次に八百屋さん最後にスーパーって流れでどうかな?」


一切無駄のないルートを提案してきた。


「その流れがスムーズだな」


「じゃあいこっか」


まずは最初のお肉屋に寄った。


「すみません!豚肉三〇〇グラムください。」


「おっ!清正くんじゃないか、お使いかい?」


俺の事を名前で呼ぶこの人は、肉屋の店主で四十代位のとても愛想の良い人だ。普段からこのお肉屋さんには、大変お世話になっている。


「えぇまあ…」


「おや?後ろの別嬪さんは、もしかして彼女さんかい?」


店主は俺の後ろにいる千早希を見てそう言う。


「いえ、彼女は…」


「初めまして、清正くんの彼女の深見と申します」


千早希は自己紹介をし、ニコッと笑った。


「おっ!やっぱりそうかい!やるじゃないか清正くん。君ならできると思っていたよ」


「ど、どうも」


「それじゃあ、今日はかわいい彼女さんがいるからお肉おまけしとくよー」


店主はそう言って、袋におまけのお肉を沢山詰めている。


「そ、そんな〜かわいい彼女だなんて…」


千早希は満更でもなさそうな顔でそう言った。それもそうだろう、学校では勿論学外の人からも告られているらしい。だが、全部断っているようだ。


「おじさん、ありがとうございます!また来ますね、それじゃいこっか清正くん」


千早希が、肉屋のおじさんにそう言うとこちらを向き手を繋いで引っ張る。


「えっ!あっおじさん、ありがとうございました」


肉屋から数十メートル歩いてもまだ手を繋いでいる。


「なあ、いつまで手を繋いでるんだ?まさかずっとじゃないよな?」


「勘がいいね清正くん。その通りなのです」


ぶっちゃけ手繋いで、ドキドキしてる。


「じゃあ家着くまでな。次行こうぜ、お腹ペコペコだ」


「うん。早く買って家行こ」


それからスーパーで食材を買って千早希の家に向かった。商店街から少し歩いたところにある。


「はぁーやっと着いたね清正くん。」


「な、結構買って荷物重いから余計な」


大きいレジ袋三枚分の食材を買ってきたのでそこそこ重い。俺が二つ持っていて、千早希が一つ持っている。パンパンに入っているので、一つでもまあまあ重いだろう。


「そういえば、今日千早希のお父さんいるのか?」


「え?お父さん?ううん、まだ仕事で今はいないと思うよ」


「そうか…」


「お父さんのことはいいから早く家入ろ?」


そう言うと、千早希は大きな門の扉を開け中に入りこっちに手を振る。俺は大きな門を潜り敷地に入った。目の前には大豪邸がある。


「ホントに大きい家だな」


迫力さ故に思ったことを口にしていた。


「そうだね。普通より少し大きいかもね」


千早希は少しと言うが、デカい。


「ただいま〜ほら入って」


「お邪魔します」


立派なドアを開け中に入る。目の前にはとても家とは思えないほどの、空間が広がっていた。真上にはシャンデリアまである。


「それじゃ。キッチンまで荷物持ってきて」


階段を上りキッチンへと向かう。


「よーし。美味しいご飯作るからイスに座って待ってて」


「いや、俺も手伝うよ」


ただ座って作らせるのも悪いので、手伝いたい。俺も料理には多少の自信がある。


「うん。じゃあ一緒に作ろっか」


千早希はエプロンを二着持ってきて、俺に渡してきた。家ではエプロンを着ないから新鮮だ。


「なんかエプロン着ると雰囲気出るな」


「だね。どう?私のエプロン似合ってる?」


ピンク色の高そうなエプロンだ。なんか良い。


「ああ。すごい似合ってるよ」


あまりこういう事は口にしないが、これを見ては言わざる得ない。


「えへへ。そっか。清正くんも似合ってるよ!」


少し照れながらニコッと笑う。かわいい。


「ありがとな。さっさと作ろうぜ」


昼休みにお弁当を沢山食べたけど、高校生男児の食べる量を舐めてはいけない。もう腹の限界が近い。


「ちゃっちゃと作っちゃおうか。清正くんはジャガイモの皮剥いといて」


「おう!」


料理している千早希は、新妻感すごいあると思いながら俺はジャガイモの皮を剥き始めた。































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