第6話 もう少し、落ち着いたらきっと

「ヒナタ……大丈夫?」

 恐る恐る声をかけるアカリ。目線が本に向いていたヒナタ。アカリの声を聞いて、ハッとした表情で顔を上げた

「あれ?私、お父様の書庫にいたはずじゃ……」

 あたふたと部屋の見渡すヒナタを見て、少し震えている手を押さえながら、持っていた本を強く抱きしめた

「何も覚えてないの?」

「……何を?」

 ヒナタが不思議そうに問いかけると、ヒナタの視線がアカリに向けられ、見つめ合う二人。静まり返った部屋に、今度はカチカチと時計の音が鳴り響いている。すると、ヒナタがアカリが持つ本の方に視線を移した。アカリもヒナタが本を見ていることに気づいて、話しかけようとした瞬間、ガチャと大きな音と共に部屋の扉が開いた



「アカリ、どうしたの?」

 ベッドに座っているアカリに気づいて声をかけたレイナ。二人の雰囲気とは違う明るい声に、驚きながらレイナの方に振り向くアカリ。ヒナタも少し体を動かして、レイナの姿を見た 

「あら、ヒナタも起きたの?」

 起きている二人の姿を見て、嬉しそうに微笑むレイナ。二人が座っているベッドに駆け寄ると、アカリとヒナタをぎゅっと抱きしめた

「お母様……あの……」

「あら、二人とも朝から不機嫌かしら?」

 アカリが話しかけると、少し体を離し二人の暗い顔を見てニコニコと微笑むレイナ。まだ少しボーッとしている二人を離してベッドから立ち上がると、テーブルに用意されていた二人分の朝御飯の中から、パンを一つ取り頬張った

「せっかく美味しい朝御飯があるのに。そうだ。私もここで二人と一緒に食べようかしら」

 レイナの突然の提案に、アカリとヒナタがキョトンとした表情でレイナを見ている

「では、お食事をお持ちしますね」

 家政婦達は、急な提案に動じることなく、レイナにペコリとお辞儀をすると、部屋を出ていった


「お母様……」

 アカリに呼ばれて、また二人のいるベッドに駆け寄るレイナ。二人をさっきよりも強く抱きしめた

「二人とも、よく寝れた?」

 優しい声に、ゆっくり頷くアカリ。ヒナタも優しい温もりに、服をぎゅっとつかんだ。そんな二人の頭をそっと撫でて微笑むレイナ。三人ののんびりとした時間があっという間に過ぎていく。すると、家政婦達が来たのか、コンコンと部屋な扉を叩く音が部屋に響いた



「レイナ様。お食事をお持ちしました」

 そう言うと、テーブルに置いていく家政婦達。テーブルに溢れそうな程の食事が用意されて、ご飯の美味しそうな匂いが、ベッドまで漂っている

「ありがとう。ヒナタ、アカリ食べましょ」

「……うん」

 抱きしめられていた手が離れて、少ししょんぼりとするアカリ。ふと隣にいるヒナタの様子を見ると、同じようにレイナを見つめボーッとしいた

「ヒナタ。大丈夫?」

 恐る恐る声をかけても、振り向くことなくボーッとしているヒナタ。そっと肩に触れて、心配そうにまたヒナタに声をかけた

「ねぇ、ヒナタ……」

 少し体を揺らして返事を待っても、ヒナタはアカリの方を振り向くことなくまだ、ボーッとしたまま。そんな二人に気づいたレイナが、クスッと笑って二人に手招きをした

「二人とも、早くおいで」

 慌ててヒナタの手をつかんで、テーブルに走ってくアカリ。少しふらつきながらヒナタもアカリに引っ張られて、テーブルに向かってく。二人並ぶように椅子に座って、パンを取りゆっくりと食べはじめたアカリ。少し遅れてヒナタもアカリと同じパンを取り、少しちぎって食べはじめた。そんな二人を見て、レイナがコーヒーを飲みながら、ニコニコと微笑んだ





「そうだ。ご飯を食べたら、みんなでお出掛けに行きましょうか」

 朝御飯も終わりに近づいてきた頃、レイナが二人に話しかけると、ご飯を食べていたアカリの手が止まり、レイナを見て首をかしげた

「お出掛けですか?」

「……どこに行くのですか?」

 アカリの質問の後、モグモグとご飯を食べながら問いかけたヒナタ。急に聞こえたヒナタの声にアカリが驚き、レイナは聞こえてきた、そのか細い声を聞いてニコッと笑った

「素敵な唄を探しにね。お天気も良さそうだから、みんなで出掛けましょ」

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