心を映す鏡
勝利だギューちゃん
第1話
「絵は心を映す鏡だよ」
昔、ある女性に言われた。
その女性が誰なのかは知らない。
ただ、20代前半くらいだったろうか・・・
僕より少し上か、同世代・・・
その女性は僕の絵をまじまじとみて、こう言った。
「君の絵には、迷いがあるね」
「迷い?」
「この絵の子たちは、泣いているよ」
なぜだ?
僕の心がわかるのか?
「今、君は焦っているね」
「焦り?」
「初心に帰ってみたら、初心に・・・」
「初心?」
「君が初めて、絵を描いた時みたいに・・・」
小さいころは絵を描くのが楽しかった。
気にせずに、好きなものを描けた。
でも、大人になると周りの評価を気にしだす。
すると、どうしても足かせになる。
あれから、何年経っただろう?
僕は未だに試行錯誤している。
昔の絵を見てみる。
確かに暗い影が出ていると思う。
どうしてものか・・・
「久しぶりだね」
どこかで会ったことのあるご婦人に声をかけられた。
あっ、あの時の・・・
「お互い、歳をとったね」
「まあ、生きているという事で・・・」
「それもそうだね」
ご婦人は、クスっと笑った。
「あなたの絵は、相変わらずだね」
「相変わらず?」
「まだ、迷ってる」
いくつかある僕の絵を見て、その中のひとつを見つけて、ご婦人が言う。
「あっ、この絵はいいね。あなたの無邪気な心が出ている」
その絵は、正直軽い気持ちちで描いた。
「あなたを応援している人はいるから・・・」
絵という物は、見る人にとって印象が変わる。
感心させる絵なら努力でなれる。
でも、感動させる絵を描くのは、とても難しい。
「この絵は感動するよ。買うね」
「いらん。ただでやる」
「安売りしないの」
「じゃあ、お気持ち程度でいい」
「じゃあこれ」
ご婦人は封筒を渡す。
その中には、大金が入っていた。
「絵の代金じゃないよ。私を感動させてくれた謝礼」
ひとりでもいい。
その人の心を感動させたい。
死ぬまでの宿題だ。
心を映す鏡 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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