問七の答え☆
同じ職場の先輩後輩の僕たちは、付き合い始めてそろそろ二年たつ。
実はプロポーズを機に一緒に住み始めたばかりだった。
一緒に出勤して、一緒に帰って来て、一緒にご飯を食べて一緒に寝る。
新しい生活はドキドキの連続で、毎日が楽しかった。
そんなある日の、慌ただしくも幸せな朝食時間。
笑顔の柚子ちゃんから「……良い話と悪い話があるんだけどさ」なんて言われたら、「どっちだっていいよ」と言いたくなってしまったけれど、いや待てよ! 僕はいつも好きな物を最後にとっておきたいタイプだから、やっぱり悪い話を最初に聞こうと思って口を開きかけた。
「やっぱり、良い話を先にしてもいいかな?」
「え、ああ。いいよ」
結局言いそびれた。
「いい話っていうのはねぇ~さっきテレビの『おはようスタジオ』でやってた星座占いでね、二尋も私も今日は一番運勢が良い日って言ってたこと! パートナーの優しい一面に気づけて幸せな気持ちになるでしょうって」
良い事って、そんなことかと思ったけれど、嬉しそうにうふふと笑う彼女を見たら、僕も思わずにっこりする。
実は柚子と僕は同じ星座生まれだ。だから星座占いでは同じ結果がでてくる。
「ラッキーカラーは青だって。だから今日は二人で青のシャツ着て行こう!」
「ああ、いいよ」
彼女はまたとびきりの笑顔でそう言った。
まあ、占いなんて興味無いのだけれど、柚子ちゃんの笑顔が見れるならそれで僕は幸せだから良かったと思う。
「じゃあ、悪い話ってどんなこと?」
良い話が星座占いだからな。きっと大したことは無いだろうと軽い気持ちで聞いてみた。
少しだけ言いづらそうに目を泳がせた彼女、覚悟を決めたように僕の目を見た。
「昨日の夕方買い物に行った時にね、二尋の大切なロードスターのミラーこすっちゃったの。ごめんなさい」
てへぺろッという感じに首を傾げながら言う彼女は、やっぱり可愛かった。
「そっか、こすっちゃったか……ええー!」
僕の愛車! 大切に大切に磨き上げているのに。
ローンがまだいっぱい残っているのに!
傷がついただとー!
そう言えば、昨夜から様子がおかしいとは思っていたんだよな。
なんか言いたそうにしては、僕が目をあげると目を逸らす。
変だなと。
男の直観も割と当たるものだな。
柚子ちゃんに車の鍵を貸したことを後悔したが、仕方がない。
そうだよな。そうなるよな。運転慣れてないもんな。
昨日は残業で一緒に帰れなったんだ。
買い物に行くのに車貸して欲しいと言われて、別に近くのスーパーで大丈夫じゃないかと喉まで出かかったけれど言わなかったんだよな。
一体どこへ行ったのやら。
これが、二人で生活するってことなのだろう。
まあ、でも、内緒にせずにちゃんと言ってくれたから良しとするか。
僕は弱々しく笑いながら、「わかった」と答えた。
「ありがとう! 二尋! 怒られたらどうしようってドキドキだったの」
そう言って僕の首に腕を巻き付けて来た彼女。
ほっとして泣きそうな顔になっていた。
だから、良い事と悪い事をセットで話そうと必死だったんだな。
ここで僕が笑ってあげたら、きっと今日の星占いは当たりになるはず。
「大丈夫だよ。少しくらい塗料が禿げたって、直せるから」
「二尋優しい」
柚子ちゃんはそう言ってぱあぁと顔を輝かせると、チュっと僕の唇にキスした。
でも、ちょっと心の中に沸き上がる疑問。
本当にテレビの星占いは、そんなこと言っていたのかな?
おしまい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます