お姫様、ここはお花畑ではございませんよ?

しぃらもー

第1話 とある朝のことでした

ここはとある西欧の国、スプラッタ王国。レンガ造りの街並みで栄えた昔に由来して現代でもその景観は保たれている。近代化が進んだといっても青い湖や川など自然も豊な国。これは若くしてそんな一国の姫を担うこととなってしまった少女、ルナとその少女のメイドの物語。




 私はこの国のお城でお勤めするメイドであるアリア。私はこの城で姫様と同じ年に生まれて一緒に成長してきた。だからわたしとお姫様は主従関係というよりも幼馴染のような関係という方がふさわしいのかもしれないというくらいの仲だ。でもこんなことを思うのは大変勝手なことでメイド長のミランダさんなんかに聞かれれば怒られちゃうかも。




 実は姫様のお父様つまり、前王様は姫様が幼いときになくなってしまった。それからは姫様のお母様つまり前女王が王国の管理も姫様のお世話もするのかと思ったのですが前女王はひどく体が弱くお世話の中心部分はミランダさんが担ってたんだっけ……


そして最近になって、前女王は亡くなった。


そのせいか表面上は明るく取り繕ってるんだろうけど姫様は心底つらそうだ。




 まだ8時と朝早い場内を見回って、花瓶に水を差すというのも私の日課だ。少し肌を冷やすような涼しさ、窓から差し込む朝日、小鳥のさえずる音、このどれもが気持ちのいい朝を私に感じさせる。


「リア!! リアー! お願い来てほしいの!」


突然、静かだった城内に姫様が私を呼ぶ声が鳴り響く。姫様は私のことをリアという愛称でよく読んでくださる。




なぜ姫様が私のことを呼ぶか、その理由はここ最近のことから容易に想像できた。


私は急いで姫様の部屋のもとへと向かう。


他の部屋とは違っていて真っ白な扉に金の装飾がされた扉の前に私は立つ。


私はコンコンと人差し指の第二関節でドアを軽く二回叩いた。


「姫様、失礼します」


私はそのまま勢いで扉を開ける。




「ちょっ、リア待ってったら……」


私がドアを開けた先にはベッドの上に膝立ちし、布団にくるまっている姫様がいた。


長く、つややかな金色の髪が朝の日差しに照らされて幻想的に輝く。


徐々に私の目線は姫様の髪から降りていき、とうとう布団で隠しきれていないもとは真っ白だったであろうネグリジェが目に入った。


ネグリジェのお尻の部分はほんのりレモン色に染まっている。それと同時にかすかに私の花をくすぐるのはおねしょ特有のアンモニア臭。




 「姫様、おねしょしてしまったのですか?」


私はあたかも驚いているかのように聞いた。


「何よ今更! わ、私が…したのは今日が初めてじゃないでしょ…… それに姫様って呼ばずにルナって呼んでって言ってるでしょ?」


姫様…… いや、ルナちゃんがぷくりと頬を膨らませて怒りを表現していた。




「ルナ王女、ううんルナちゃん、風邪引いちゃうから早くお風呂に入らないと」


「そ、それも何だけどリア……」


ルナ王女が突然だまりこんだ。私はその様子をおかしく思いルナ王女の様子をしばらく見ていると急に両手を太ももの間にはさみもじもじと動き出した。はぁはぁとルナ王女がつらそうな呼吸をする。


「姫様、お花摘みにいかれますか?」


「う、うん……」




頬を赤らめながら二つ返事をする姫様に私は手を差し出した。


すると姫様は左手でおしっこの出口を抑え、キメ細やかで真っ白な手が私の手の上に乗る。強く握ってしまえば崩れてしまいそうなその手を優しく包み込み、姫様の背中に手を当てながらゆっくりと姫様をベッドから下ろす。




「ゆっくりでいいのでちゃんと我慢しててくださいね」


「う、うん……」


よく見れば姫様はネグリジェにギュッとシワができるくらい強く握っている。


それだけ我慢がもうきついのだろう。


私は姫様の手を引いたまま扉を開き、私たちは廊下に出た。


赤を基調とし、ところどころ金色の装飾がされたカーペットの上を歩く。


私が今引いているのはそんな豪華なお城で1番偉い方の手だ。




お城ということもあって、もちろんだがとてつもなく広い。姫様の部屋から1番近いトイレまでどのくらいあるだろうか。


姫様のお部屋を出て、右に曲がり、今度は突き当たりを左に行って……


着くまで2分はかかるかもしれない。


私は姫様の歩くスピードに合わせて徐々に前へと進む。




「頑張ってください!あともう少しですよ!」


「う、うん」


姫様は部屋を出た時よりも辛そうな表情をしていた。


私は心の中で姫様が無事にトイレにたどり着けることを祈りつつ、前へ前へと足を進めた。

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