1つの物語を君に 〜外伝〜 夢色の場合

アキノリ@pokkey11.1

夢色の秘めた想い

夢色って名前が気に入っている。

だって夢を見る色だから。

それって虹色な気がするから。

だけど私は髪の毛が、今の容姿が気に入らなかった。

それはね。


私の容姿は真っ白だから。

白の髪の毛に白い眉毛で、おばあさんみたい、って言われるから。

だから気に入らないの。

私はその事もあってお部屋に引き篭もる事にした。

もう二度と誰にも会わないで済む様に。


だけど。


そんな概念をお兄が壊したの。

お兄は光の様な暖かい手で暖かく私の手を包んでくれて.....私を褒めてくれた。

光の様な笑顔で私を見てくれた。


絵がうまいと言ってくれてそして自分は絵を捨てたとも言ったの。

だから私はこの人となら一心同体で家族になれる。

そう思ったから私はお兄が好きになった。

心から愛している。

恋だと思う。



私は12年前に生まれた。

神田洋子。

つまり私のお母さんの子宮から生まれて家族になった。

有栖お姉ちゃん、姫お姉ちゃんが迎えてくれる中で。

私は暖かく幸せに暮らした。


だけど。


産みの親の片方に嫌な事をされた。

エッチな事もされた。

お父さんに。

だから私は心から人を信頼しない事にしたの。


周りもみんなも。

みんな死んじゃえってそう思った。

髪の色でみんな馬鹿にするのも有って自暴自棄になったの。

だから私は心を閉ざしたの。


お兄の事は怖かった。

また同じ事をされるって思ったから。

心からビクビクしていた。

新しいお父さんも怖いから。


それでお兄をお父さんを見ていた。

だけど全然お兄は違った。

私を一人の女の子として見てくれた。

エッチな感じでとかじゃなくて綺麗な女性って言ってくれた。


だから私はこの人を信頼しようって決めたの。

でも学校には行きたくないから。

お兄の為に頑張ろうって思ったの。


そしたらお兄が褒めてくれるからなの。

心から、と考えていると。

お兄がリビングに入って来た。


「お。夢色。何を描いているんだ?」


「ナイショ」


「.....まあ相変わらずだな。お前」


「うん。.....だってひみつだから」


お兄は優しげな笑顔で私を見ながらお茶を飲む。

そして私にも持って来てくれた。

今日は有栖お姉ちゃん、姫お姉ちゃんは家に居ない。


お義父さんもお母さんも。

私とお兄だけだから。

クレヨンと色鉛筆で描く。


「夢色。無理はするなよ」


「大丈夫。今日はへいき」


「.....そうか。それなら良いけどな」


「うん。あ。お兄。後でゲームであそびたい」


「.....おう。何する?」


お兄はテレビの下の棚から座っていたのを立ってゲームを探し始めた。

私はその様子を見ながら、ゲームはいっしょのがしたい、と答える。

赤くなりながら。

お兄は、そうか、と笑みを浮かべてくれる。

私はその姿に、はにかむ。


「私もさがす」


「お兄ちゃんに任せなさい」


「.....いいの。お兄」


「良いよ大丈夫だ」


きっと私は優しさにも惹かれた。

お兄の、だ。

だからお兄が好きなの。


お兄といつか.....恋人になれたらもっと幸せだなって。

そう思うの。

だけど私の様な引き篭もりは.....受け付けないだろうって思う。


「夢色。そういえばお前に渡したい物があったんだ」


「え?なにかな」


「.....俺の使っていた高級色鉛筆セット。これあげるよ」


いきなりお兄が鞄からそれを取り出す。

私は驚きながら見る。

かなり高い品物の様に見える。

私が貰って良いのかな。

そんな感じの大人系のモノ。


「.....お兄。.....本当にいいの」


「使ってないのに持っていても仕方が無いしな。お古で申し訳無いけど」


「.....ううん。お兄から貰えるなら何でも嬉しい」


「.....そうか」


そう。

好きな人から貰えるモノだったら何だって私は嬉しい。

思いつつ私はニコニコしながらその色鉛筆を使いながら。

絵を描いていく。

お兄には劣るけど描いてみせるよ、と考える。


「夢色は命を吹き込む絵を描く。だから俺より色鉛筆を使い熟せる筈だと思ってな」


「.....そんなこと無いもん」


「いや。きっとそうだ。お前の絵は人を笑顔にするから」


「.....またそうやって私を.....ものにする」


「.....え?ものにするってどういう意味だ」


「何でもないもん」


知らなくて良いの、と答える私。

そして私は赤くなりながらプイッと横を見る。

頬を膨らませてな感じで。


恥ずかしいし嬉しい。

お兄がそう言ってくれるのが。

だから横を向く。


「.....お兄」


「.....何だ?」


「.....す、好きなこ、のタイプって何」


「.....は!?いきなりだな!?」


「い、良いから答えて」


何でそんな質問を、とぶつぶつ言うお兄。

私はその姿を見ながら期待に想いを馳せる。

するとお兄は、お前みたいな子かな、と回答した。

あ。これふざけてるかも、と思い私はムッとしてお兄を見る。


「そんなはいりょはいらないから」


「.....お、おう」


「真面目にかいとうして」


「あ、は、はい」


お兄は青ざめて慌てた。

私はお兄をジト目で見る。

するとお兄は散々悩みながら.....数分して答えた。


そうだな、と。

優しくて家事とか育児が出来る子だな、と話をする。

私は、うんうん。なるほど、と答えた。


「でも何でそんな話を?」


「.....ひみつ」


「.....秘密が多いな.....」


「女の子にはひみつが多いのです」


「あ、はい.....」


それから私は、出来た、と言いながら絵をお兄に見せてみた。

お兄はその絵を、!、的な感じで見る。

そして苦笑いを浮かべた。

そうしてから、夢色。これは俺か、と答える。

で。こっちは夢色だな、とも。


「.....うん。私とお兄」


「.....何で有栖と姫は描いてないんだ?洋子さんとか親父とか」


「.....どんかん」


「.....お兄ちゃん全然分からないんだけど.....鈍感.....?」


「そう。どんかん。お兄のアホ。ばか」


お兄は、え!!!!?、と私に目をパチクリする。

そしてワタワタと慌てる。

その様子も愛おしいけど私は愛の告白は絶対にしない。


でもね。

それで良いんだ。

今の距離はきっとこれで。

じゃ無いと大切な何かが壊れる気がするから。

それが怖いから、と考えながらお兄を穏やかな顔で見る。


「す、すまん。夢色。お兄ちゃん分からない」


「まあお兄らしいね。あいかわらずだけど」


マジに分からない、と困惑するお兄に。

じゃあゲームしようかお兄、と言いつつ私は絵とクレヨンなどを置く。

その絵の下には私がこう描いている紙が有ったりする。

お兄の恋人になれます様に、っていう七夕の短冊みたいな。

その願いを込めたものが、ね。


fin

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