女か虎か

 ☆STEP 1


 リドルストーリーもミステリであろう、という判断で取り上げます。なにも謎を解くだけがミステリではないのです。謎そのものが存在することがミステリともいえる。それはさすがにちょっと苦しいか。

 有名なお話なのでミステリ好き以外のかたも、あらすじを聞けば「あぁ」となるかもしれません。

 とある国で一人の青年が罪に問われます。青年は王女と恋仲になってしまったのです。

 刑罰として、二つの扉の一つを選ぶことになります。片方の扉を開けば虎が出てきて、青年は食べられてしまいます。もう一つの扉の向こうには美女が待っていて、青年は命が助かるばかりか、その美女と結婚できるのです。

 王女は手を尽くし、どちらの扉に虎がいないかを調べ上げます。青年と目があった王女は片方の扉を示します、というお話。

 では、英訳作業に入りましょう。

 今回もシンプルです。「女」は【woman】「か」は【or】「虎」は【tiger】。



 ☆STEP 2


 というわけで……


 “Woman or Tiger?”


 ……で、どうでしょう?



 ☆STEP 3


 正解は……


 “The lady,or the Tiger?”


 ……でした。


 うーん、なんともな感じ。カンマ(,)の存在とtheは「これから気をつけます」でよしとするにしても、【lady】と【woman】のニュアンスの違いはきちんと調べなければいけないようです。

 英和をあたります。この先は筆者の見解なので、真面目に英語を学びたいというかたは(もしいらしたら)「こいつの言っていることは適当だ」という前提でお願いします。ちゃんとした学習書や教室で学ぶことをオススメいたします。

 どうも【lady】は単純に性別としての「女性」というだけでなく「貴婦人、淑女」という要素も含んでいるようです。

 作品の中身と併せて考えると、このタイトルはちょっと興味深い。扉から出てくるのは「女か虎か」という問いかけだととらえるのが普通でしょう。少し踏み込んで、青年に扉を示した王女が「高潔な精神を持った女性」なのか「虎のごとく野蛮な獣」なのかという問いでもあると解釈すると、深いような気がするのです。

 二つの扉のどちらに美女がいて、どちらに虎がいるかを王女は知っているのです。肝は「虎の扉」を選択させず、青年の命を助けることに成功した場合、青年は王女ではなく、扉の奥の美女と結婚してしまうという点。

 描かれていない物語を読め、というリドルストーリーですから、タイトルにも想像力を働かせる必要はありそうです。


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