あなたのお庭はどんな庭?

 ★STEP 1


 アガサ・クリスティーです。ここまで取り上げなかったのは、なにを選ぶか迷ったからです。名作『そして誰もいなくなった』は訳しがいがありそうですが、これ、実は知っているのです。

 なぜならば、原書も持っているから。“And Then There Were None”ですよね? 事件の見立ての元ネタとなったマザーグースの童謡の一部から引っ張ってきたのでしょう。差別的な単語を含むということで改題される前の別タイトルもありましたが、これは触れないでおきます。

 そこで短編「あなたのお庭はどんな庭?」を選びました。ちょっとマイナーすぎますかね。私は子どもの頃、児童向けに訳したクリスティーの傑作集で読んで好きな作品です。

 そして、確かこれもマザーグースの童謡のワンフレーズだったはず。

 英訳作業にまいりましょう。「庭」は【garden】、「あなたの」は【your】、問題は「どんな?」の部分。

 疑問文につきものの5W1H的なワードが頭に浮かびますが、どれがいいのか。when、where、whoは違いますね。可能性がありそうなのはwhat。ん? 5Wといいながら四つしか出てきていません。「いつ、どこで、誰が、なにを」、おや、日本語にしても四つしか出てこない。1Hはhowでしょう。



 ★STEP 2


 そうか、howか。というわけで、こうなりました。


 How about your garden?


 で、どうでしょうか?



 ★STEP 3


 正解は


 How Does Your Garden Grow?


 でした。


 おぉ、howだ。よかった、安易にwhatに逃げないで。にしてもdoesとは。【How about~】は「~してはどうですか?」という提案に用いるようです。【How about you?】で、自分の意見に対して「あなたは(どう思いますか)?」と相手の考えを確認するフレーズのようです。

 で、【grow】です。確か、「育つ」みたいな意味だったような、と辞書にあたります。「(人や植物が)成長する」とのこと。庭だからかなぁ、と思いながらも首をひねっています。

 確かに「つくりかけ」の庭ということが一つのポイントになる作品なので、庭の状態が単純に「花がいっぱいですね」とか「緑が多いですね」ではなく、「どの程度、完成形に近づいているか(育っているか??)」が大事になります。

 いや、そんな複雑に考えず、元ネタのマザーグースから、そのまま引っ張ってきたと考えればいいような気がします。


 ★おまけ

(追記)

 元ネタは、やはりマザーグースでした。「へそ曲がりのメリー」、“Mary,Mary,quite Coutry”がそれ。

 これは英語を学ぶ企画なので、詳しくは触れませんが、どうやってクリスティーがこの作品を書いたか、わかった気がします。


 現在、この短編を読めて入手しやすいのは、この二冊。

『黄色いアイリス』(中村妙子訳/ハヤカワ文庫)

『砂に書かれた三角形』(宇野利泰訳)


 ハヤカワは今はクリスティー文庫としてリニューアルされていて一番、手に入りやすいでしょう。創元版では「あなたのお庭をどうする気?」というタイトル。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る